『背信の蜜』
爛熟と背信と腐敗の更なる深奥へ。
夜の帳が下り、闇が誘う部屋の中で雄と雌とが重なり合う。
官能的な口づけを交わし、舌と唾液を絡ませ刹那の歓びを交わす。
甘美な香りを放つ蜜が熟した女の秘部から溢れ、心までも濡らしていく。
室内には淫靡な匂いがに充満し、獣たちの情欲をさらに煽り立てる。
終わらない夜の始まりだった。
白い肌に刻まれた淫紋が、薄明りの灯された部屋の至るところで踊っている。
言葉になる前の始原の喘ぎが、空間と時間と溶け合い部屋中を支配する。
淫欲に塗れた宴はいつまでも続き、悪魔と天使の嬌声が響き渡る。
夢と現実の狭間で、個を失くした男女は快楽の渦へと飲み込まれる。
それは悪魔の誘惑かもしれないし、天使の福音かもしれない。
淫らな夜は明けることを拒み、ただ背徳の時を刻み続けた。
底の見えない暗闇が、世界の果てまで続いているかのように。
幾度もの朝を越え夜を迎え、熟した花々は蜜を湛えゆっくりと腐敗する。