『心に花を 唇に棘を』



ほんの出来心だった。
時間と寂しさを埋めるためにと言い訳をしてみるが、
本当はただ退屈な日常に飽き飽きしていただけなのかもしれない。

互いに互いの欲望を受け入れて満たし合う。
その甘い口づけが、理性を狂わせ倫理観を蝕む。
音を立てて崩れ落ちていくのは、たぶん踏み外し進んできた道。

きっとこの出逢いは偶然ではない。
そんな根拠のない確信が、そうあって欲しいという予感が、すべてを変えた。
もう後戻りすることはできない。
最後に残った一欠片の理性がそう告げていた。

これは、世間からすればまったくもって普通ではないこと。
許されないことだということはわかっている。
それでも人妻という禁断の果実に手をのばす。


当ブログに掲載した上記の短編小説を大幅に加筆修正した四作品に加えて、
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