大学生の頃にファミレスで出会った厚化粧の熟女店員に魅入られて(1)

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 大学に進学して一人暮らしを始めた頃、夕食を一人で食べることに慣れなかった。
 学部やサークルの友人と食事をすることもあったが、それはそれで帰宅後の孤独が苦手だった。
 試行錯誤の末、近所のファミレスで一人で夕食を取るのが一番落ち着いた。程よい雑音と顔見知りの他人がいる空間が心地よかったのだ。
 常連客とは互いに認識していても話しかけることはない。店員もこちらの好みを把握しており、注文はスムーズだ。そんなぼんやりとしたコミュニティがそのファミレスにはあった。

 とはいえあくまでファミレスだ。会員制の高級レストランではない。迷惑な客も訪れる。
 よくあるクレームはメニューの勘違いだ。もちろん客側の。
 そのファミレスを頻繁に利用していた俺は、客がどのメニューを勘違いしやすいか経験的に知っていた。店員さんに至っては何をか言わんやだ。そのため間違えやすいメニューに関しては、店員さんも丁寧に確認していたが、それでも間違える客がいる。しかもそういう客に限って自分の間違いを認めない。

 一度、我慢できずに店員さんを助けたことがある。
 酷いクレームだった。店員さんも慣れたものだから、相手の勘違いを論点にはせず『作り直します申し訳ありません』で場を収めようとする。だがそのクレーム客は何が気に食わないのか、ネチネチと不平不満を口にし続けていた。

 関わりたくなかったのと、そのうち店長や上席者が対応するだろうと思い傍観していたが、どうにもその気配がない。
 俺の憩いの空間がクレーム客のせいで重苦しい雰囲気になっているのに段々と腹が立ってきて、お節介にも口を出し間に割って入っていた。

『注文を勘違いしたのはお前だよ』
『そのメニューは客が勘違いしやすいから、店員さんも間違いがないように丁寧に確認してただろ』
『お前はそれを聞き流して適当に注文して、やれ聞き間違えだなんだとクレーム言ってるだけだ』
『なんならお前がはっきり注文した場面を録画してたから見せてやろうか』

 という内容を丁寧に説明して差し上げたら、クレーム客はそそくさと帰って行った。
 勝利の余韻に浸るでもなく俺も颯爽と店を後にしようとしたのだが、絡まれていた店員に呼び止められ、お礼を言われた。

「先程は助けていただきありがとうございました。……それで大変恐縮なのですが、どうして店内を撮影されていたのでしょうか?」

 それが俺と澄江さんとの出会いのきっかけだった。

◆◆◆

 澄江さんは見たところ50代の小柄な女性で、やや化粧が濃いめの良く言えば華やかな、悪く言えばケバい印象の女性だ。
 主にホールスタッフとして働いているが、他の店員と話している際の様子から判断すると、おそらくリーダー的な立ち位置なのだろう。彼女がてきぱきと仕事をしている姿は見ていて気持ちが良かった。

 結論から書けば、俺を呼び止めた彼女が危惧していたのは、クレーム客を隠し撮りした動画を俺がSNSで拡散することだった。
 炎上でもすれば会社としても対応を検討せざるを得ない。その場合クレーム客はもちろんだが、それを撮影して拡散した人物も威力業務妨害に問われる可能性がある。助けて貰ったのは感謝しているし、だからこそ見過ごすわけにはいかない。というのが澄江さんの言い分だった。

 俺としても無断で店内を撮影していたことに多少の後ろめたさもあったし、加えてSNSで拡散するつもりもなかったので了承した。
 大人しく従う俺に、澄江さんはむしろ驚いたようで「え……そんなあっさり消してくれるんですか?」と不思議そうに尋ねる。

「はい、もともと偶然映っていただけなので……」
 少し恥ずかしかったが俺は正直に答えた。
 この春から大学に進学して一人暮らしを始めたが、一人で過ごす静かな部屋に慣れないこと。そしてそんな夜に環境音としてファミレス店内を定点撮影した動画を流していること。
「初めて経験する一人暮らしで、人恋しいのかもしれません」
 そう締め括ると澄江さんは「なるほど……。そういうことだったんですね」と納得したように頷いた。

「あの、よろしければまた当店へお越しください。今度はお礼としてサービスいたしますから」
 そう言って彼女は微笑んだ。相手は親子ほども年の離れた女性なのに、正直その笑顔に俺は少しドキリとした。マザコンではないつもりだったのだが、知らぬ間に母性に飢えていたのだろうか。

 彼女も実のところ、いつも一人で来店して夕食を食べる俺のことが気になっていたらしい。
 迷惑客から助けて貰ったお礼に寂しさを紛らわせてあげたいと言われた。

◆◆◆

 その後も俺は定期的にファミレスへ足を運んだ。
 澄江さんは俺が店を訪れるたびに「いらっしゃいませ」と嬉しそうに微笑んでくれた。それが社交辞令だったとしても、俺は嬉しかった。仕事の合間に他愛もない雑談をしたり、俺はいつも聞き手だったが、彼女と話しているだけで楽しかった。

 要するに彼女の思惑としては、慣れない土地でホームシックにかかっている俺に対して親代わりのような存在に慣れたら、ということだったのだろう。後で聞いて知ったことだが、もしかすると彼女自身にも、子どもが独立して家を出た寂しさを埋めたいという気持ちがあったのかもしれない。
 気分転換にお出かけしない? と誘われて彼女の休日に一緒に食事をしたり、ドライブに連れて行ってもらうことが増えた。
 彼女の明るい笑顔と気さくな性格に、慣れない生活で感じていた寂しさや孤独も次第に薄れていった。

 ただ澄江さんには感謝しているが、その一方で彼女の本心が、純粋な善意と親切心だけだったのか、というとそれも疑問だ。
 親子ほども年齢が離れているとはいえ、若い男と親戚でもない既婚女性とが頻繁に会って出かけるのは無防備すぎる気もする。
 そのあたりの本心、つまり彼女に俺との間で何かが起きるかも、と期待する下心があったのかどうかはわからないが、事実として彼女が俺の家に初めて訪れた日、俺は彼女とセックスをした。

 世の中にこんな簡単にセックスできる女性がいるなんて、というのが童貞だった俺の率直な感想だった。
 彼女の身体は女性らしく柔らかで、張りはないが蕩けるように温かく、そして際限なくいやらしかった。彼女とセックスをしていると、俺はまるで底の見えない井戸を落下しているような気持ちになった。

 それまで自分の肉体的な魅力について考えたことはなかったが、彼女の反応からすると俺の容姿は彼女の好みに合っていたらしい。あるいは息子よりも年下の男と体を重なる背徳感もあったのかもしれない。

 仕事のない日や早く終わった日などには、彼女はせっせと俺の家に通い、生活面から性的なことまであれこれと世話をやいてくれた。
 彼女はいつも「お礼だから」と言っていたが、不倫の快楽を楽しんでいることは明らかだった。俺も年齢差のある年上の女とのセックスにどっぷり嵌まった。彼女の旦那が工場勤務で夜勤の日は家を開けるのをいいことに、ほとんど毎日のように快楽を貪った。

◆◆◆

 プレイも段々とエスカレートして、心理的な障壁さえなくせば実現可能なプレイはだいたい試したと思う。
 縛り、目隠し、首輪。特に首輪は彼女が興奮して何度もせがんできた。
「私はあなたの犬です」と言いながら尻を突き出して腰を振る姿は獣じみていて俺の加虐心を刺激した。

 俺のものをしゃぶらせながら、彼女の尻を叩く。
 澄江さんは叩かれるたびに膣を締め上げ、よだれを垂らしながらフェラチオをする。
 そのいやらしさに精液を彼女の口の中にぶちまける。彼女は俺の出したものをすべて飲み、俺の股間を掃除する。

 それから首輪をつけたまま、アナルに尻尾の飾りが付いたディルドを挿入し、四つん這いで散歩に出る。
 深夜の住宅街は寝静まり、人の気配はなく、全裸に首輪をつけた女が、誰に見つかるかもしれないリスクに興奮しつつ膀胱に力を込める。
 俺の役目はそんな彼女の体を舐め回すように視姦することだ。やがて彼女は陶酔した表情で、俺の見ている前で放尿を終えて、電柱を汚した小便が滴り落ちる。

「私、もうあなたから離れられない」ある日、澄江さんが言った。
「年下の男の子とのセックスがこんなに刺激的だなんて思わなかった」
 それは正しいようで正しくない。もはや俺が年下だからどうこうという問題ではなく、単純に彼女が性に対して貪欲で、刺激を求めているのだ。彼女の飽くなき欲望を満たすために、性欲旺盛な若い男であることが好都合であるにすぎない。

 そう心の中で思いながらも「俺も同じです」と笑顔で答える。
「私ね、もう旦那じゃ物足りなくて、あなたじゃないと満足できない身体になっちゃったみたい」
 彼女はそう言って俺の股間に手を伸ばす。
「ねえ、もっとしよ?」
 俺としても彼女の誘いを断る理由はない。
「もちろん」
 そう答えると彼女は嬉しそうに俺の股間に顔をうずめた。
「ずっと、死ぬまでしてようね」
 そんなことを言って男を求めてくる彼女を俺は笑顔で受け入れた。


(続く)