美熟女レジ店員との淫らな交わり(1)

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 夜勤の終わりと共に、工場を出るときの解放感は格別だ。
 俺が勤める会社は4勤4休、つまり4日働いて4日休むというシフトが採用されている。夜勤明けの休日はいつも楽しみだ。

 俺は帰りの車内で、今週はどう過ごそうかなと考えた。録りためたテレビ番組も観たい。SNSでの友人からのメッセージにも返さなければ。しかし、まずは食料の買い出しだ。俺は帰り道にある大型ショッピングセンターの駐車場に車を停めると、食料品売り場で総菜を選びレジに向かった。

「よろしくお願いします」とレジの女性に挨拶する。
 彼女は金井智子さん。年齢は40代前半だろうか。俺は一回り以上も年上の彼女に密かに憧れていた。
 優しそうな瞳とふっくらとした唇の美人で接客も丁寧。ビビりの俺には気安く声をかけるなんてできないけど、彼女にレジを打ってもらう時間が日常の小さな幸せの一つだ。

 結婚はしているのだろうか、指輪はしてないけど仕事の邪魔になるから外しているという可能性もあるよな。そんなことを考えていると会計が終わったので、俺は「ありがとうございます」と言って釣銭を受け取る。今日は金井さんがレジに入っていてラッキーだったな、などと思いながら帰宅し、疲れた体を休めるためにすぐに眠りについた。

◆◆◆

 それが夢だというのはすぐにわかった。目の前で金井さんが微笑んでいて「翔太くん」と俺の名前を読んだからだ。彼女が俺の名前を知っているはずがない。俺は彼女が接客する大勢のうちの一人にすぎない。そんな彼女が俺だけに微笑んでいるのだから、これは間違いなく夢だ。そしてとてもいい夢だ。

 夢の途中で夢だと気づく夢を「明晰夢」というらしい。
 夜勤明けに眠ると、そういうことがよくあった。
「金井さん、好きです」と俺は告白した。夢だの中では自由に振る舞える。彼女も微笑んで「嬉しい」と答える。

 明晰夢の展開は、自分にとって都合よく進むことを俺は経験上知っていた。夢だから何をしてもいい、そう思うと俺は彼女にキスをしたくなった。そんな俺の気持ちを察したのか、金井さんの方からキスをしてくる。俺の首に腕を回すと、そのまま俺を引き寄せて、濃厚な口づけをしてきた。夢の中の彼女はとても積極的だ。俺は彼女の腰に手を回すと、その身体を抱き寄せてさらに激しくキスをした。

「翔太くん」と金井さんが俺を呼ぶ。
「はい」と答えると、金井さんが俺の胸に手を当てた。
「ずっと好きだったの」と金井さんが言った。
「俺もです」俺は彼女の髪を撫でた。

◆◆◆

 目が覚めると夕方になっていた。夢の内容は忘れたが、心地よい気分だ。
 夕食の準備をするために冷蔵庫を開けて、お米が少なくなっていたことに気づいた。よく見ると調味料も減っている。買いに行くべきだが面倒だ。金井さんがレジにいれば行く動機にもなるが、朝から働いていたのだ、もう退勤している頃だろう。でもまあ、仕方ないか……。俺は諦めてため息をつくと買い物に出かける。

 本日二度目のショッピングセンター来店をすると、店内は午前中とは比較にならないくらい混んでいた。仕事帰りのサラリーマン、夕飯の買い物に来た主婦、近所の大学生。そんな人々でごった返している。これもまた、俺が夕方に買い物に来たくない理由の一つだ。

 混雑する店内を呆然と眺めていると「きゃっ」という声がする。客同士でぶつかったらしい。ぶつかった相手は無視して立ち去ったのか、倒れた女性だけがそこにいた。
「大丈夫ですか?」反射的に声をかけて、俺は思わず固まった。金井さんだ。普段、目にする制服ではなく私服を着ている。しかも倒れた拍子にスカートがめくれ上がり、白く柔らかそうな太ももとその奥の下着が見えていた。
「ありがとう、大丈夫です。ぶつかったみたいで」金井さんはそう言いながら顔を上げて俺を見ると、あら? という表情を浮かべた。

 俺はその瞬間、唐突に彼女が出てきた夢を思い出した。そして自分勝手な妄想のような夢を見たことが恥ずかしくなり、顔が赤くなるのを感じた。
「怪我がなくて、よかったです」俺はなんとかそれだけ言うとその場を立ち去った。

◆◆◆

「はああ~」連休の最終日の朝、俺は深いため息をついた。結局あれから一度もショッピングセンターに行ってない。できるだけ自然に振舞ったつもりだが挙動不審だったろうか。そう思うと金井さんと顔を合わせるのは気が重かった。

 もしかすると金井さんの担当するレジにばかり並んでいたのにも、気づかれていたかもしれない。気持ち悪いと思われていたのかもしれない。そんなネガティブな思考で頭が埋まっていた。そのせいかSNSの友人からも『元気なさそうだけど大丈夫ですか?』と心配のメッセージを送られたほどだ。

 しかしいつまでも落ち込んでいるわけにはいかない。明日からまた仕事なのだ。今日のうちに色々買い込んでおかなければならない。ずっとこんな気分で過ごすわけにもいかない。もう気持ち悪いと思われてても仕方ないじゃないか、実際に気持ち悪いんだし。俺は開き直って自分を奮い立たせると、ショッピングセンターに向かった。

 お店に入ると寄り道はせず、最短距離で買うべきものをカゴに入れて回った。余計なことは考えずに買い物をするだけのマシーンになるのだ。だがさずかにレジに並ぶ際は、金井さんのレジを避けることにした。そこまでは無心にはなれない。

 だがタイミング良いのか悪いのか、順番待ちをしていると金井さんが「お待ちのお客様こちらにどうぞ」と俺に声をかけてきた。無視することもできず誘導に従い「お願いします」と彼女の前にカゴを置く。
「おはようございます。最近お見かけしませんでしたけど、体調でも崩されてたんですか?」すると驚くべきことに金井さんが話しかけてきた。

 俺は突然のことに固まってしまい「いえ、そんなことはないですけど」と、もごもごと言う。
「先日はありがとうございました」「先日、ですか?」「もしかして制服じゃなかったから、気づきませんでしたか? 倒れたときに心配して声をかけてくれましたよね」そう言って金井さんは微笑んだ。
「あっ、いえ、それはその」
「いつも来てくださるのに、しばらく見かけなかったから、体調でも崩されたのかと心配してたんです」
 金井さんはそう言うとレジを済ませて、お釣りを手渡した。そして「ありがとうございました。またお越しください」と言って送り出してくれた。

 俺は頭が真っ白になったまま帰宅した。何が起こった? なんで金井さんが俺に話しかけてきたんだ? もしかして夢でも見ているのだろうか。でも……怒ったり気持ち悪いとは思われていなかったようだ。俺は安堵すると、これからも金井さんに会いに行けるのだと思い嬉しくなった。


(続く)