音楽教師との学生時代の思い出(3)

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 彼女との付き合いが始まりから別れまで順風満帆であったとはいえない。秋が過ぎ冬が訪れ俺の卒業が近づくにつれて、彼女の情緒は少しずつ不安定になっていった。しまいには体調不良といい一カ月以上も学校を休む始末だ。俺は毎週のように休日は彼女の家を訪れ、彼女の心と体を慰めた。

「ねえ、卒業しても会ってくれる?」彼女は泣きながら俺に縋りついてきた。
「もちろんですよ、むしろ卒業してから方が会いやすくなるじゃないですか。生徒と教師の関係ではなくなりますし」俺は彼女を抱きしめて慰める。
「でも卒業したら学校で会えなくなるし、あなたと過ごす時間は減るじゃない。それに進学して新しい出会いがあれば私のことも飽きて忘れるかもしれない」彼女はそう言って泣き続けた。
「そんなことないですよ、いつでも電話してください」俺は彼女の頭を撫でながら言ったが、彼女は納得していないようだった。
「じゃあ、約束して。進学しても私のこと捨てないって」そう言って彼女は俺の小指に自分の小指を絡めた。
「わかりました、約束します」俺は彼女の手をしっかりと握り返すと笑顔で答えた。

「ねえ、キスして」彼女は甘えたような声で言うので俺は彼女に口づけをした。舌を絡ませ唾液を交換しあいながらお互いの体温を感じ合うように強く抱きしめると彼女の心臓の鼓動まで伝わってきた。
「ねえ、もう一回しましょう」彼女は潤んだ瞳で見つめてくる。その瞳には情欲の色が浮かんでおり、全身で俺のことを求めているように見えた。あるいは俺のことを自身の体で繋ぎ留めようとしているようにも。
 俺は彼女を押し倒すと激しく責め立てるようにピストン運動を繰り返す。その度に彼女は大きな声を上げて悶え続けたが、それでもなお足りないとでもいうかのように俺のものを強く締め付けてきたので、俺は何度も彼女の中に欲望を解き放った。彼女はそれを受け入れるように優しく微笑むと俺にキスをしてくるのだった。
「ずっと側にいてね」彼女はそう言うと俺の胸に顔を埋めてきた。俺はそんな彼女を優しく抱きしめて頭を撫でるのだった。

◆◆◆

 その日も彼女が欠勤したので、俺は学校が終わると彼女の家に行った。インターホンを押すが出て来る気配はない。合鍵を使って中に入ると中は真っ暗でしんとしていた。電気をつけると荒れ放題の部屋があり、そこら中に脱ぎ散らかされた衣服や下着類が散乱していた。キッチンには大量の酒瓶が置かれており、トイレに駆け込むと床には吐瀉物の跡がある。俺は嫌な予感がして彼女の部屋に向かうと、そこには裸のまま布団にくるまってベッドで横になっている彼女の姿があった。

「先生、大丈夫ですか?」
 慌てて駆け寄って抱き起こすと彼女は焦点の定まらない目で俺のことを見ると涙を流し始めた。
「ごめんなさい」彼女は何度も謝ってくるので俺は優しく抱きしめて背中をさすってやることにした。しばらくそうしていると少し落ち着いたのか呼吸も整ってきたようだった。
「何があったんですか?」俺が訊ねると彼女はぽつりぽつりと話し始めた。
「昨日、すごく寂しくなってあなたに会いに行こうとしたの」彼女はそう言ってまた泣き始めた。
「でも途中で怖くなって行けなくなっちゃって、それでお酒飲んでたら飲みすぎちゃって」そこまで言うと再び嗚咽を漏らし始めるので、俺は彼女が落ち着くまで手を握り添い寝をした。

「ごめんなさい、迷惑かけて」彼女が落ち着くまでしばらくかかったが、ようやく話せるようになったようでゆっくりと話し始める。
「私ね、あなたがいないとダメみたいなの。あなたがいないと不安で仕方がないの」彼女はそう言うと再び泣き出してしまった。
「大丈夫ですよ、俺はここにいますから」俺が優しく声をかけると彼女は安心したように微笑んだ。
「ねえ、キスして」彼女が甘えたような声で言うので俺は彼女に口づけをした。舌を絡ませ合い唾液を交換しあう濃厚なもので、彼女の口からはアルコールの匂いがしたが気にしなかった。

 それからしばらくの間俺たちは抱き合っていたが、やがてどちらからともなく互いの性器を愛撫し始めると、そのままゆっくりと体を重ね合った。彼女の体は温かく柔らかくて心地よかった。
「ねえ、もっと強く抱きしめて」彼女が耳元で囁くので俺は言われるままに力を込めて彼女を抱き寄せた。すると彼女もそれに応えるようにぎゅっと抱き着いてくるので、そのまま俺たちは何度も体位を変えて交わり続けた。

「ねえ、こんな先生でも好きでいてくれる?」彼女が潤んだ瞳で俺を見つめながら言うので、俺は迷わずに答えた。
「はい、大好きですよ」彼女のことを強く抱きしめてキスをすると彼女は幸せそうに微笑んでくれた。それからも俺たちは何度も体を重ね続けたが、次第に意識が朦朧としてきたのか反応が薄くなってきているのを感じたので終わりにすることにする。最後にもう一度だけキスをしてから彼女を抱き上げて風呂場に連れて行き汗を流すことにした。
「ごめんね」彼女が申し訳なさそうに言うので俺は微笑んで答える。
「気にしないでください」「ありがとう」彼女はそう言うと俺の胸に顔を埋めてきた。俺はそんな彼女の髪を優しく撫でながら微笑む。
「そろそろ卒業よね」彼女がポツリと呟いたので、俺は頷いて応える。
「俺が卒業しても忘れないでくださいね」冗談交じりに言うと、彼女は少し恥ずかしそうにしながらも笑顔で答えてくれた。

◆◆◆

 卒業後も俺たちは連絡を取り合い続けた。なんだかんだと卒業前は盛り上がったが、過ぎてしまえばあっさりと俺たちは新たな環境に馴染んだし、彼女は彼女で半年もすれば年相応の相手との新しい出会いが待っていたようだ。結局、俺とのロマンスは一過性の熱病のようなものだったのだろう。それからも俺と彼女は連絡を取り合い続けたし、彼女の新しい彼氏との目を盗んで俺たちは何度か体を重ねた。

「先生の身体、やっぱり最高に気持ちいです」
「嬉しいわ」彼女はそう言って微笑むとキスをしてくれた。彼女の大きな胸が俺の胸板に押し付けられる。柔らかくて気持ちが良くてずっとこうしていたくなるような気分になる。
「ねえ、もう一回良いかしら」彼女が甘えたような声で言うので、俺は彼女の中に入ったままの陰茎をゆっくりと動かし始める。彼女の膣は相変わらず温かく湿っていて、それでいてきつく締め付けてくるので油断するとすぐに果ててしまいそうになるほどだ。
「好きよ、愛してる」彼女はそう言いながら俺の上に跨って腰を動かし続ける。
「俺もです」彼女が絶頂を迎えるたびに膣内は激しく収縮し精液を搾り取ろうとしてくるのだが、俺は何とか堪えて射精感を抑えていた。

「ねえ、あなたもイきなさいよ」彼女は妖艶な笑みを浮かべながら言うと俺のものを強く締め付けてきたので、耐えきれずに俺はそのまま彼女の中に思い切り解き放った。どくんどくんと脈打ちながら大量の精液を流し込んでいる間も彼女は俺を抱きしめ続け、最後の一滴まで搾り取ろうとするように膣を痙攣させていた。
「気持ちよかった?」彼女が耳元で囁くので、俺は素直に答えることにした。すると彼女は満足げな表情を浮かべて俺の頭を撫でてくれた。「私も最高に気持ち良かったわよ」彼女はそう言うと俺の隣に寝転がってきた。お互いの汗が混じり合い、体温が混ざり合うような感覚が心地よくていつまでもこうしていたい気分になった。
「ねえ、今日は泊まっていってもいいのよ」彼女が悪戯っぽく言うと俺は小さく頷いて答えた。

 そうして彼女との関係は結局、俺が進学して県外に引っ越すまで続いた。とはいえ関係は教師と生徒だった頃のものとは異なる。あくまでも身体だけの関係だ。それでも俺は彼女との関係を楽しんでいたし彼女もそうだったと思う。旧友から聞いた噂話では転勤先で同僚教師と結婚して子どももいるらしい。もういい年だしお酒も量も控えめになっているだろうか。

 今朝、郵便ポストに同窓会のお知らせが届いていた。懐かしくて幹事役に連絡をとり色々と昔話がてら同窓会について聞いた。地雷音楽教師であった彼女も出席するとのことだ。俺は出席の旨を伝えると「久しぶりにみんなと会えるのが楽しみだよ」と言い電話を切った。本当に楽しみだ。


(終)