休日の駐車場で一目惚れした熟女と(1)

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 まだ俺の主な移動手段が自転車だった頃のことだ。ホームセンターの駐車場で熟女に声をかけられた。
 当時の俺は学生で、お金もないし彼女もいない。趣味といえば本を読んだり、ちょっとしたDIYをするくらいで、体力も時間も持て余していた。

 その日も休日だったが、俺は特に予定もないので、最寄りのホームセンターに行き駐輪場に自転車を止めた。鍵をかけて顔を上げると、店舗の壁面ガラスに反射して駐車場に止まっている車が目に入る。その中の一台、コンパクトサイズのドイツ車の運転席に座っている女性に目を奪われたのだ。

 年齢は40代くらいだろうか。もしかすると50代かもしれない。髪色は暗めの茶色で強めのパーマがかかっている。高級そうなデザイン性の高い白いスーツを着ており、反射したガラス越しでも濃密な色気を感じた。
 恥ずかしながら、俺は彼女を見ただけなのに心臓が早鐘を打つのを感じ、ズボンの中では激しく勃起していた。

 もっと彼女を見ていたい、そんな思いから特に用事もないのにスマホを取り出して、誰かと連絡をとる振りをしながら、ちらちらと窓に反射している彼女を観察した。彼女の姿を少しでも鮮明に記憶に留めて、どこかでオナニーをしたいとすら思い始めていた。

 そんな俺の視線が露骨すぎたのか、もしくは挙動不審だったのか、はたまた彼女の勘が鋭かったのかは判らない。彼女はゆっくりと両手で頬杖をつくと、フロントガラス越しにじっとこちらを見つめた。

 彼女に見られている。ちらちらと盗み見ていたことに気づかれたのだろうか。早く立ち去った方がいいのかもしれない。でも見ているだけで特に何かをしたわけではない。何より、もっと彼女を見ていたい。
 俺は葛藤しながらも彼女を観察し続けた。彼女が車を降りる気配はない。待ち合わせでもしているのか、同乗者の買い物が終わるのを待っているのか。じっと頬杖を着いて俺を観察し続けている。

 そうして10分くらい経っただろうか。彼女が車から降りる。
 待ち合わせの相手が現れたのだろうかと思ったが、それが自分自身を誤魔化すための詭弁だとも自覚していた。なぜって彼女は明らかにこちらに向かって歩いてきているから。
 逃げるべきなのは解っている。でもだんだん近づいてくる彼女から目が離さない。車の中にいるときは見えなかったが、彼女は上下揃いの白いスーツを着ており、膝上くらいの長さのスカートからは綺麗な脚が伸びている。

「ねえ、あなた」と声をかけられた。
「え? あ、はい」と間抜けな返事をしながら俺は彼女を正面から見る。咎められるのだろうかという想像と、堂々と彼女を見られるという歓喜で、俺は緊張から自分が少し震えているのを自覚した。

「そんなに緊張しなくてもいいわよ。あなたが待ち合わせの相手か確認したかったの。さっきからずっと私のことを見ていたわよね?」
 やはりバレていたようだ。俺は素直に謝ることにした。
「……はい、見ていました。申し訳ありません」
「やっぱりそうよね。メールでは40歳って書いてたのに、ずいぶん若く見えるから確信がなかったけど……」そう言って彼女は眉をよせた。
「年齢を偽っていたのね。あなたどう見ても学生でしょう。見ているだけで声もかけてこないし、年増の女をからかうつもりだったのかしら?」彼女はため息をついた。

 そこで俺はようやく彼女が勘違いしていることに気づく。
「あ、あのっ……違います!」
 先ほどまで萎縮していた相手からの突然の強い否定に、彼女は面食らったようだった。
「俺……あ、いや。僕は、あなたの待ち合わせの相手ではありません」
「え……。そうなの?」彼女は艶やかな唇をぽかんとあけた。
 そして辺りを見回してから少し考えると
「ここで立ち話は人の目が気になるわね。私の車の中でお話を聞かせてくれる?」そう言って俺の手をそっと握り、安心させるように微笑むのだった。

◆◆◆

「本当に待ち合わせ相手じゃなかったのね、ごめんなさい」
 なぜか彼女の車の後部座席に並んで乗り込むと、しばらくスマホを操作した後で彼女はそう言った。
「でも、あなたも紛らわしかったわよ。明らかにこちらを伺ってたし」思い出したのか可笑しそうに笑う。
「私てっきり、年上の女性にアプローチしたけど年齢を上にサバ読んでるから言い出せなくて、それで困っているのかと勘違いしちゃったわ」

 俺は彼女と同じ空間にいる緊張から、なんとなくバツが悪くなり話題を変えた。
「待ち合わせされていた方は大丈夫だったんですか? 急用とか事故とか」
 彼女はきょとんとした表情を浮かべると、すぐに可笑しそうに笑う。
「そういうのじゃないわ、すっぽかされたというか、たぶん元々冷やかしだったのね」
「あ、すみませんでした」不躾な発言だったようだ。
「ううん、いいのよ。薄々そうじゃないかと思ってたから」そう言って彼女はスマホの画面を見せてくれた。
 マッチングアプリが起動しており、待ち合わせ相手だった男性らしきプロフィールが表示されている。女性向け美容商品のセールスマンで年齢は40歳らしい。イケメンっぽい横顔の写真だ。

「私たち今日で会う約束は2回目なの。前回のデートでもすっぽかされたし、今日も来なかったから、たぶんサクラか暇つぶしで登録してる人なんでしょうね」
 俺は彼女の言葉に困惑した。そんな暇人がいるのだろうか、彼女みたいな素敵な女性とのデートをすっぽかす?
「それは……ひどい人ですね」
「でしょう? もう会うのは止めようと思うわ。連絡するのも馬鹿らしいし、このままブロックしちゃいましょう」
 そう言って彼女は男性をブロック登録するとスマホをしまった。
「もうどうでもよくなってきたから、アプリも消そうと思っていたの。あなたが来てくれてよかったわ」
 そう言って彼女は俺の腕を軽く叩く。俺は彼女の言葉に引っかかりを覚えたが、それよりも彼女との距離の近さや肩に触れた手の柔らかさに意識が集中していた。

「それで、お話を聞かせて? どうして私のことを見ていたの?」
 彼女は妖艶な微笑みを浮かべると、俺の太ももに手を這わせる。
 俺は咄嗟に「いえ……そんなことは」と口を開いたが、言葉の途中で彼女は人差し指を俺の唇に押し当てた。
「だめよ。そんなありがちな言い訳じゃ納得できないわ」そう言って俺の太ももに置いた手をゆっくり動かし始めた。俺はその感触に思わず身体を固くした。しかし彼女はそんな俺の様子を気にすることなく、股間に手を伸ばすとズボンの上から優しく撫でた。
「こんなにカチカチに勃起させてるんだから、ただの興味本位で見てたわけじゃないんでしょう?」
「そ、それは……」俺は彼女の手の動きに合わせて吐息交じりの声を漏らしてしまう。

 彼女は俺の様子にくすっと笑うと、今度は耳元に口を近づけて囁いた。
「正直に言えば、もっと気持ちいいことしてあげるわよ」
 俺はゴクリと唾を飲み込み、意を決して口を開いた。
「……はい……見てました」彼女は俺の言葉を聞きながら手を動かし続ける。
「もっと具体的に言ってくれないと分からないわ」彼女の手の感触に思わず腰を浮かしそうになるが我慢した。
「あなたの……その……スーツ姿と、とても艶っぽい雰囲気に見惚れてしまって……」

 彼女は俺の言葉を聞きながらも手を動かすのをやめなかった。むしろどんどん激しくなっていくようだ。俺は彼女の手つきに耐えきれず、ついには自分から腰を動かしてしまう。
 そんな俺の様子を見て彼女は楽しそうにすると、ようやく手を止めてくれた。
「正直に言えたご褒美に、もっと気持ち良くしてあげないとね」
 俺は期待と不安が入り混じった複雑な感情を抱きながらも黙って頷くしかなかった。

 彼女は後部座席のリクライニングを一番後ろに倒すと、そのまま俺を押し倒した。そしてベルトを外してチャックを開けるとパンツの中に手を入れる。
「ちょ、ちょっと待ってください!」俺は慌てて彼女の手を制止した。
「どうしたの? 気持ちよくなりたくない?」彼女は不思議そうな顔をして俺を見たが、すぐに納得したように頷くと「ああ……」と言って微笑んだ。
「もしかして初めて? だったら初体験がおばさんと車の中でじゃイヤかしら」
 そう言うと彼女は少し考えた後、「でもあなたの股間は準備万端みたいだけど」と言ってパンツから取り出した俺のものを見つめる。

「どうかしら……ねえ、なにか言って? もしあなたが本当に嫌ならやめるから」
 彼女はそう言うと、ゆっくりと手を動かし始めた。
 俺はあまりの快感に頭が真っ白になる。それでも彼女がもたらす快楽を手放したくない一心で、首を振りながら「お願いします、続けてください」と何とか言葉を紡いだ。
「ふふ、いい子ね」彼女は満足そうに笑うと、今度は一気に激しく手を動かし始めた。俺は彼女の手の動きに合わせて声を上げてしまう。
「かわいいわね……ほら、見て? もうこんなに先端が濡れてるわよ?」そう言って彼女は親指でグリッと尿道を押し上げた。俺は強烈な刺激に「あっ……んっ……あああっ!」と情けない声を上げてしまう。

「どう? 気持ちいい?」彼女は俺の反応を見ながら手を上下に動かしていく。
 俺は必死に首を縦に振った。すると彼女は嬉しそうな表情を浮かべて更に強く擦り上げてくる。初めて経験する気持ちよさを手放すまいと、夢中で彼女の手に自分の手を重ねた。そして自分からも腰を動かして快楽を求める。
「あら、積極的ね……」彼女は俺の行動に一瞬驚いた様子だったが、すぐに妖艶な笑みを浮かべた。「いいわよ、もっと気持ち良くなりましょうね」そう言うと彼女は手の動きを速めた。俺はここが休日のホームセンターの駐車場であることさえ忘れ、必死に彼女にしがみついて耐えた。
「ほら……もうイキそう? 我慢しなくていいのよ?」そう言って彼女は俺の顔を見つめたまま手の速度を上げる。
 俺は限界を迎えようとしていた。だが最後の力を振り絞って彼女への想いを伝える。
「好きですっ! あなたのことが……んっ、好きですっ!」
その言葉を聞いた瞬間、彼女の手の速度が更に上がった。そして次の瞬間には絶頂を迎えた。

◆◆◆

「はぁ……はぁ……すみません……俺だけ……」
 息も絶え絶えな状態で何とか謝ると彼女はくすっと笑って俺の頭を撫でた。
「気にしないでいいのよ、若いんだから仕方ないわ」
 そう言うと彼女は上体を屈めて俺のモノを口に含む。それは先程までの手技とは違い、快楽を送り込むよりも労わることを目的としたような優しい動きだった。俺は彼女にされるがまま呆然と眺めていたが、その仕草一つ一つに艶っぽさを感じて見惚れてしまう。

「うん、綺麗になったわね」彼女がペニスにちゅっとキスをして口を離す。
 俺は恥ずかしさと情けなさで顔を赤くするしかなかったが、彼女は気にする様子もなく話を続けた。
「ねえ、あなた名前なんて言うの?」そう言って俺の目を見つめる。「え……名前ですか? 良太です」と素直に答えてしまった。彼女は満足げに微笑むと俺の頬にキスをした。
「良太くんね、私は……」彼女はそこで少し考えるような素振りを見せると悪戯っぽく笑って言った。
「そうね……私の名前は秘密にしましょう」そう言って彼女は人差し指を唇に当てた。
 俺はその仕草にドキッとすると同時に、彼女の名前が知りたくて仕方がなくなった。

「さっきは勢いでつい可愛がっちゃったけど、やっぱりこういうのは、きちんとした方がいいと思うの」
 そう言って彼女は立ち上がり、助手席に置かれていた紙袋を手に取った。「はい、これあげる」紙袋を俺に手渡すと彼女は扉を開けて運転席へと戻る。俺は彼女の意図がわからず困惑したまま車から降りた。
「お菓子だから、よかったら食べて」
「あ、あの……どういうことですか?」俺が訊ねると彼女は少し恥ずかしそうに笑って答えた。
「良太くん、私ね……あなたのこと気に入っちゃったみたい。だから続きは今度ホテルでね」
 そう言うと彼女は車を発進させた。俺は呆然としながら去っていく車を見つめることしかできなかった。


(続く)