休日の駐車場で一目惚れした熟女と(2)
あれから俺は彼女との行為が忘れられず悶々とした日々を過ごしていた。目を閉じれば彼女の声や匂いが鮮明によみがえる。まさかあんなことになるとは夢にも思わなかったが、あれは現実で実際に起こった出来事だ。思い出すたびに股間が熱くなるのを感じる。俺は何度も思い出しては彼女とセックスする妄想でオナニーをした。
問題は、あの日の情事の余韻で夢うつつだった俺は、すっかり彼女との連絡先交換を失念していたことだった。
彼女が見せてくれた、マッチングアプリ画面の記憶を手がかりに、それらしい女性を探してみたりもしたが、既に退会したのか見つからなかった。彼女と初めて会ったホームセンターに、同じ曜日の同じ時刻に行ってもみたが、彼女には再開できず時間を浪費するだけに終わった。
趣味のDIYも読書も身が入らない。連絡先も分からず、もうこのまま二度と彼女とは会えないのだろうかと落ち込み、休日の外出そのものが億劫になっていた。だが俺の精神状態とは関係なく、体は汚れるし、ゴミもたまるし、トイレではお尻を拭かなければならない。
俺は生活用品の補充という必要性に迫られて仕方なくホームセンターに出かけた。
◆◆◆
店内をぐるぐると回っていても、俺の思考はあの日のことにばかり及び、買うべきものも素通りしてしまう始末だ。ぼんやりと店内を歩きながら、もういっそ出直して来ようかと思い始めていたところ、ふと視線を感じて振り返った先に彼女がいた。
この前は白いスカートスーツだったが、今日はビジネススーツだ。前回がデートを意識した装いだとしたら、今日は仕事中に立ち寄ったような雰囲気があった。
彼女は俺を見ると嬉しそうな表情を浮かべて近づいてきた。「やっと会えたわね」と彼女は言う。「もう会えないかもと思っていたから嬉しいわ……連絡先交換するの忘れてたわね」彼女はそう言ってスマホを取り出すと俺に画面を見せた。そこには俺が何度も探し求めた彼女の名前とメッセージアプリのIDが表示されていた。
無事に互いの連絡先を交換すると
「今日は暇かしら? 良かったらお茶でもしに行かない?」と彼女は言う。
俺は二つ返事で了承すると、彼女の車に乗って近くのカフェに向かった。
運転している最中、彼女は助手席に座った俺の股間をズボン越しに撫でながら言った。
「あれから私以外の女性と女遊びでもしていたの?」彼女は微笑んで俺のものを撫で続ける。
俺はその快感に身悶えしながら答えた。「いえ……そんなこと、してません……」俺がそう答え終わる前に彼女は俺のものから手を離すと、今度は俺の太ももを撫でて言った。
「そんなこと言って、全然あのホームセンターにも来なかったじゃない」
その言葉に彼女もまた俺との再会を望んでくれていたのだと知り嬉しくなる。
「何度か行ったんですけど、会えなくて落ち込んだので、家に引きこもってました」
彼女は、まあ、という感じで目を大きく開く。
「嬉しいこと言ってくれるじゃない……それなら私が責任を取ってあげないとね」
なんとなく彼女が触っていた部分に触れると、そこにはまだ彼女の手の温もりが残っているような気がした。
◆◆◆
やがて雰囲気のいいカフェに着くと、彼女は慣れた様子で店員と話し、俺たちは個室に案内された。おそらく本来は5〜8人くらいで用いる部屋なのではないだろうか。
「私の行きつけのお店なの」そう言って彼女は俺にメニューを差し出すと隣に腰かける。それなりの広さのある部屋に密着して座ることになり、彼女の存在をより濃密に感じた。
「私はいつもの抹茶ラテにしようかしら」彼女は楽しそうに言う。
メニューを眺めるが、特に何を頼むかは決めていなかったので、目についた豆乳アイスコーヒーを頼んだ。
飲み物で喉を潤しながら俺と彼女は改めて自己紹介をした。
彼女は麗子さんといい、輸入雑貨や婦人向けの衣類を取り扱う会社の社長らしい。ご主人とは死別しており子供もいなかったため、亡くなった彼の事業を彼女が引き継いだとのことだ。
独り身の寂しさもありパートナーを探していたが、仕事を通しての人間関係は何かが違うと感じてマッチングアプリに登録した。しかし冷やかしやドタキャン、失礼なメールを送ってくる男性の多さにうんざりして、退会したのだと彼女は話した。
俺はなんとなく、麗子さんがマッチングアプリで上手く相手を見つけられなかった原因が想像できた。
彼女の容姿やプロフィールは、なんというかフィクションの設定のようだったからだ。こうして実際に話をしてみれば、それがおそらく事実だろうということは、身なりや品の良さから感じられる。
だが事実だとしても、彼女の設定に彼女の容姿でプロフィールを掲載すれば、普通の男性は警戒して避けるのではないだろうかと感じた。
もっとも本人にはその自覚はないらしく、
「私がもっと若かったら違ったのかもしれないけどね」などと笑っている。
俺は彼女が魅力的すぎるからこそ逆にマッチングアプリでの出会いに恵まれなかったことを伝えたかったが、上手く言葉にできなかった。結局「麗子さんはすごく魅力的だと思います」と言うのが精一杯だ。
「ありがとう、そう言えばあなたは私に一目惚れしたんですものね。あの時のあなたの熱烈な視線、こうしていると思い出すわ」そう言って冗談めかして笑う。
話題が初めて会った際の経緯に及んだので、必然的に俺と麗子さんはこれからのことを話した。
「それで……この前のお話の続きなんだけど……」彼女はそう言うと俺の手を握り指を絡める。「あれから日が経って冷静になって、それでも私と本当にセックスしたいと思ってる?」そう言って彼女は伺うように首を傾げた。
俺は思わず息を飲むがすぐに答える。
「はい……したいです。むしろ日が経つほど、麗子さんにまた会いたい気持ちが膨らんでいたくらいです」
俺のストレートな物言いに、彼女はこれまでの余裕から一転して、少し照れたように目を泳がせた。
「でもその、私って、良太くんから見たらずいぶん年上じゃない? 本当にしたい? おばさんをからかってるとかじゃなくて?」
「冗談だったら、こんなになりません」俺はちらりと自らの下半身に視線を落とす。先ほどから麗子さんと手を繋いでいるだけで、俺のそこは激しく勃起していた。
彼女の質問は、俺の本心を確かめるためというよりも、彼女自身の迷いを消すために必要だったのかもしれない。
「じゃあ……これからホテルに行くのよね?」と囁く。俺は思わずゴクリと喉を鳴らして頷いた。
「そうよね……わかったわ」彼女は俺の手を取ったまま立ち上がった。「さ、行きましょう」
会計は彼女のカードで支払われたようで、俺は身支度を済ませると彼女に手を引かれながら店を出ることになった。駐車場に向かうまでの間、すれ違う人が皆俺たちを見ていた気がするが、それは気のせいではないだろう。彼女の魅力もさることながら、そんな彼女と密着しながら歩いていると、俺の硬くなった股間もおさまるはずがなかったから。
駐車場に着くと彼女は車の鍵を開けた。「乗って」と促されて今日は助手席に座ると、彼女がエンジンをかけて車を発進させた。
「良太くんは……私のどこが好きなのかしら?」運転しながら麗子さんが訊ねる。
俺は少し考えてから答えた。「一目惚れなんですけど、でも、それだけじゃなくて……」麗子さんは俺の言葉をじっと待っているようだったので、考えながら言葉を続けた。
「さっき麗子さんと話しているうちに……その……もっと知りたくなったんです」いや、それは正確ではない。
「麗子さんのことを知って、もっと色々と学んで、麗子さんに相応わしい男になりたいと感じたんです」
それは彼女の質問の回答としては、論点がずれていたかもしれない。だが俺がそこまで言うと、麗子さんは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう」彼女はそう言って俺の股間に手を伸ばすと、ずっと勃起し続けている俺のものをなだめるように、ズボンの上から優しくさすり始めた。
俺は反射的に腰を引こうとしたが、ここで引いてはいけないような気がした。
「良太くんがこうなっているのは、私の中に入りたくて仕方がないから、ということでいいのよね?」彼女は俺と自分自身に言い聞かせるように囁きながら手を動かし続ける。
俺は恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じたが、それでも彼女の手の動きから目を離すことができなかった。
やがて車はホテル街に入ったようで、麗子さんはその中の一軒に車を止めた。「行きましょうか」そう言って彼女は車を降りる。俺も彼女の後を追って車を降りた。
(続く)