美人キャリアウーマンのヒモになった話(4)

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 彼女との関係はだいたい二年間くらい続いた。その間、俺は毎日のように彼女とセックスをしたし、彼女が望むことは全てやった。キスや軽い愛撫から始まってだんだんとエスカレートしていき最終的には必ず中出しだった。
「妊娠しちゃうかもよ?」と笑いながら言う彼女に「その時は責任取ります」と言うと彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。
「川上くんとなら本当に結婚してもいいかもね」とも言っていたが、冗談だったのだろうと思う。

 そんなある日のことだ。いつものように彼女の部屋で行為に耽っていた時のことである。突然彼女がこんなことを言い出したのだ。
「ねえ、川上くん。私ね、結婚するつもりなの」
 それを聞いて俺は一瞬固まってしまった。今まで散々セックスしてきた相手からそんなことを言われたら動揺してしまうのも無理のないことだろうと思う。しかしすぐに冷静さを取り戻して聞き返すことにした。
「美沙さんは、そういうこととは無縁の人生を送るつもりなのかと思ってました」
「失礼ね。まあ確かにそうなんだけど、これでも意外としがらみもあるのよ」彼女は笑っていた。
「どんな方なんですか?」
「さあ……会ったこともないし。 料理人らしいから、料理は上手なんでしょうね」
 それを聞いて俺は思わず吹き出してしまった。彼女の料理の腕は壊滅的だしちょうどいいかもしれない。
「ということは、お見合いなんですね」
「そうよ。実家に戻って家業を継ぐの」
 そう言う彼女の口調からは不満の色がありありと感じ取れた。なるほど確かに、彼女にもしがらみがあるのだろう。彼女は苛立ちを紛らわせるためか俺の股間に手を伸ばし、目的のモノを探し当てるとゆるゆると上下に扱き始めた。
「迷ってるんですか?」と訊ねると彼女は驚いたように体を震わせた。
「美沙さんって、何か迷っていることがあると、俺のペニスをゆっくりと上下に動かしながら考えますよね」
「え……嘘。自覚してなかった。……私、そんな癖があるの?」
 自分が信じられないとでも言いたげに呟く彼女に向けて、俺は「嘘ですけど」と笑って告げる。

「もう!  私がこんなに悩んでるのに」と怒る彼女だったが、それでも手の動きだけは止めずに動かし続けているのが可愛らしい。俺は彼女の頭を撫でながら言う。
「……美沙さんならどんな男でも選び放題ですよ」
「あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない」
 とってつけたような褒め言葉だが、満更でもないようでキスしてくるのでそれに応える。舌を入れてきたかと思うと歯茎の裏や上顎などを舐め回された後にようやく解放された。
「ねえ、川上くん。私についてきてよ」
「さすがに、それはまずい思いますよ。家政婦は終わりにしましょう」
 俺がそう言ったことで彼女は決心がついたようだ。
「私としては川上くんを従業員として雇って、このまま関係を続けるのも考えたんだけど。やっぱりけじめは必要よね」
「そこまで考えてもらい有難うございます。短い間ですがお世話になりました」
 彼女としては俺にあれこれとごねられる方が厄介だったはずだ。もしかすると別れ話がもつれる可能性への危惧もあったのかもしれない。いずれにせよ話が決着したことで、彼女は晴れ晴れとした表情になっていた。
「じゃあ結婚が決まるまで、名残惜しいけど、せめて残された時間で川上くんの若い身体を堪能することにしましょうかしらね」
 そう言うと彼女は再び俺の上に覆いかぶさってきた。俺としても彼女との生活は悪くないものだったし名残惜しくはある。だがいつまでもこんな関係が続けられるわけもない。まして彼女と結婚したところで遠からず破綻するのも目に見えている。今の関係は、あくまでも金銭や生活のためと割り切っているからこそ継続できるのだ。どちらにせよ最終的には別れるのであれば、ベストなタイミングを選ぶべきだろう。

「美沙さん、こっちを向いてください」
「……んっ……ちゅっ」
 俺は彼女にキスをする。舌を差し入れると彼女もそれに応えてくれるのでお互いの唾液を交換し合うことになる。しばらくして唇を離すと銀色の橋がかかるので、それを切るようにもう一度軽く口づけしてから言う。
「美沙さん……愛してます」
 彼女の目を見つめながら言うと、彼女は一瞬驚いたような表情を見せた後に微笑んでくれた。
「ありがとう、私もよ」
 ふいに胸が締め付けられるような感覚を覚えた。この感情は一体何なのかと考えるが答えは出ない。だが少なくとも悪いものではないと思う。俺はもう一度彼女を抱き寄せた後に耳元で囁いた。
「愛してます」
 そう言いながら彼女の中へと侵入していく。やわらかく温かい肉襞がペニスに絡みつき、身体中へ快感が拡がっていく。ゆっくりと引き抜いていきカリ首の部分で一旦止めるとそのまま一気に押し込んだ。パンッという乾いた音と共に彼女の体が跳ね上がる。結合部からは愛液が流れ出しておりシーツに大きな染みを作っていた。
「美沙さんっ……好きです!」
 そう言いながら何度も抽挿を繰り返す。その度に彼女の口から漏れる喘ぎ声が心地良く耳に響いた。やがて限界が訪れるのを感じ取りラストスパートをかけるべくペースを上げることにしたのだがその瞬間に彼女もまた絶頂を迎えたらしく膣内が激しく収縮する。同時にペニスを強く締め付けられたことで堪らず精を放ってしまった。ドクンドクンという脈動に合わせて大量の精子が放出されていくのがわかる。
「はあ……はあ……」
全てを出し切ったところで引き抜くと、ぽっかりと開いた穴から白い液体が流れ出るのが見えた。その様子を目の当たりにして思わず生唾を飲み込んでしまう。彼女はまだ余韻に浸っているようで、時折体を痙攣させていた。そんな彼女の頭を撫でてやりながら優しく語りかけることにする。
「美沙さん、大丈夫ですか?」
 彼女は小さく肯いた。どうやら意識ははっきりしているようだ。俺は彼女の隣に寝転ぶとそのまま腕枕をするような形で抱き寄せつつ頭を撫で続けた。しばらくすると落ち着いたのか彼女は口を開いた。
「……ねえ、川上くん」
「はい」
「私たちって結局どういう関係だったのかしらね?」
 そう聞かれて少し考えるが答えはすぐに出た。
「そりゃあ、ただの家政婦と雇い主ですよ」

 俺は家政婦として住み込みで働き始めた時のことを俺は思い出していた。あの時も戸惑いつつも結局は彼女に押し切られる形で今の状況になってしまったわけだが、今となってはそれも良い思い出だ。結局のところ俺たちはお互いの利害関係の上に成り立つ関係に過ぎなかったのだろう。それでも俺は彼女のことが好きだったし、彼女もまた俺に対して好意を持ってくれているのは間違いないはずだ。だからこそ別れるとなると名残惜しく感じるのは仕方ない。
「また、会えるかしら?」
「もちろんです」
 俺がそう答えると彼女は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔を見ると胸の奥底が熱くなるような感覚を覚える。この感情の正体は一体何なのだろうかと考えようとしたが結局答えは出なかったし考える必要も無いだろうと思うことにした。今はただ、彼女とこうして抱き合っていられる時間を大切にしたいという気持ちの方が強かった。


(終)