カラオケSNSで出会ったケバエロ美熟女(1)

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 春の訪れを告げる桜の花びらが、小さな町の静かな通りを舞っていた。
 俺はその風景を自宅の窓から眺めながら、ぼんやりと考える。
(次の休日はカラオケで何を歌おうかな)

 俺はスマホでカラオケSNSのマイページにログインした。
「ソングステーション」というインターネット上のWEBサイトがある。いわゆるSNSに分類されるサイトで、カラオケ好きな人たちが自らの歌や動画を公開している。
 俺もまたこのサイトに登録し、カラオケを通じて色々な人たちと交流していた。例えば世代が近かったり、好きな曲のジャンルが似ていたり、プロレベルだと思うくらい上手だったり、あとは魅力的な女性だったり。まあ、そんな感じだ。

 このSNSにはユーザー間で直接メッセージを送り合うような機能はない。できることと言えば公開されている曲を視聴したり、その曲に「イイネ!」を送ったり、お気に入りのユーザーとフレンド登録したり、歌ってほしい曲をリクエストするくらいだ。
 たぶんトラブルに発展しそうな要素は省いているのだろう。メールやメッセージアプリが苦手な俺にとっては、このサイト内でのゆるい交友関係がとても心地よかった。

「お、アリサさんの新しい動画が公開されたばかりだ」
 俺は彼女の新着動画を開くとソファに座って鑑賞した。
 彼女はSNSでフレンド登録している友人たちの一人だ。公開されているプロフィールを信じるのであれば、俺と同じ県内に住んでいるらしい。歌唱ジャンルはポップス全般で、最新のヒット曲を歌いながら踊っている動画が多いようだ。カラオケ機器に付属している低解像度の画質ではわかりにくいが、年齢は40代くらいだろうか。

(エロいよなあ……すごくスタイルもいいし)
 動画を視聴しながら思う。年齢は俺よりかなり上だが、俺は彼女のファンだった。
 彼女の動画を堪能してマイページに戻ると、自分宛てにカラオケのリクエストが届いていることに気づいた。

「ん? なんだこれ」
 それは変わったリクエストだった。
『明後日のワルツ』『大宮川』『午前11時の街』という三曲が届いている。
 全然知らないアーティストの全然知らない曲だ。
 誰かが間違って送ったのかと思ったが、リクエストの主は、なんとアリサさんである。これまでに何度もリクエストを貰ったことはあるし、こんな間違えをするとは思えない。

 ふと、もしかすると曲名を用いたメッセージなのだろうか、と思った。俺が住む隣の市には大宮川という地名があり、そこにカラオケ店があることも知っていた。
 明後日は休日だから行けないこともない。
 俺は半信半疑ながら『OK、ラジャー』という曲をアリサさんにリクエストすると、次の休みを待つことにした。

◆◆◆

 二日後、午前11時、俺は大宮川を訪れた。
 これで勘違いだったら相当イタイ奴だな、と自嘲する。地図アプリを見ながら目的地に辿り着き、スマホの画面から顔を上げた俺は、そこに立っている女性を見て「心臓が跳ねる」とはこういうことか、と感じた。

 カラオケ店の前にアリサさんがいた。何度も動画で観た姿だ。
 彼女は俺の視線に気づくと、一瞬ぱっと笑みを浮かべると
「トコトコさんですよね!」と言った。
 トコトコは俺がカラオケSNSで用いているユーザー名である。間違ってはいないが通りでそう呼ばれるのは恥ずかしい。俺は小さな声で「そうです。でもその名前で呼ばれるのはちょっと……洋介でお願いします」と今まで生きてきて一番恥ずかしい自己紹介をしたのだった。

◆◆◆

「さっきは、ごめんなさい。でもトコトコさんって可愛い名前だと思いますよ」

 二人でカラオケの部屋に入ると、彼女は恥ずかしる俺を見て可笑しそうにクスクスと笑っている。
「改めまして、はじめまして。アリサこと亜里沙です。今日は来てくれてありがとう」
 亜里沙さんは彼女の歌声通りの少しハスキーな声でそう言った。
「こちらこそ、ありがとうございます。リクエストのメッセージが勘違いじゃなくて安心してます」
「私も洋介くんが来てくれるかどうか、すごく緊張しちゃった」
 そう言って彼女は俺を見つめる。
 彼女の甘い香水のせいか、それともまっすぐこちらを見つめて話す視線のせいか、彼女との間に漂う雰囲気に頬が熱を持つのがわかった。
「あと思ってたよりも若くてびっくりしたよ。あんなに歌声は堂々としてるのに」
 彼女はそう言いながら、緊張する俺が面白いのか、わざとらしく目を大きく開けて、じっと見つめる仕草をした。蛇に睨まれたカエルも、こんな気分なのかもしれない。

「俺は、その……一目見て亜里沙さんだってわかりました。動画で観てたのもありますけど、すごく綺麗で……」
 自分でも何を言ってるのか解らないまま、しどろもどろに答える。
「ほんとに? 会ってみたら意外とオバさんでビックリしたんじゃないの?」
「そんなことないです、本当に。今まで会った誰よりもスタイルが良くて、美人だと思います」
 俺が即座に断言すると、亜里沙さんは流石に照れたのか「えへへ、ありがとう」と身体をもじもじして喜んだ。
「同年代の人にそう言われることは結構あるけど、洋介くんみたいな若い子にそう思ってもらえると嬉しいなあ」
 そう言いながら彼女は、気を取り直すようにドリンクを飲む。俺は彼女の小ぶりだが艶めいた唇がストローを咥えるところや、彼女の喉がこくりと動くのを呆けたように見つめていた。

「よしっ、気を取り直して歌おっか。洋介くん」
 彼女は楽しそうにそう言うと、慣れた手つきでタブレットを操作して曲を入れるとマイクを持つ。俺も慌てて曲を入れ、緊張で声が震えないようにしながら何とか歌った。

◆◆◆

 それから俺たちは二時間くらいカラオケを楽しんだ。亜里沙さんは俺の知らない曲をたくさん知っていたし、彼女の歌声は生命力に満ちていた。俺はというと、自分の知っている曲を歌うのに精一杯だったし、亜里沙さんの生歌やセクシーな姿、何より歌いながら俺を見つめる視線にドキドキしていた。

 ドリンクで喉を潤しながら休憩していると、亜里沙さんは「緊張は解けた?」と訊いてきた。俺もようやく彼女の色気に少しは慣れてきたので「ええ、亜里沙さんのおかげで」と正直に答える。
「よかった。実はね、本当は言うつもりなかったんだけど、洋介くんにちょっとお願いがあるの」そう言うと亜里沙さんは俺の手を握った。

 一瞬、美人局や結婚詐欺、という言葉が頭をよぎる。だが冷静に考えると俺みたいなお金の無さそうな男をターゲットにはしないだろう。亜里沙さんのバッグや小物は、ファッションに疎い俺でも知っているような高級ブランドで、明らかに俺よりも彼女の方が収入が良さそうだ。だから彼女のお願いは俺にとって予想外のものだった。

「洋介くん、私の恋人になってくれませんか? それとも他に好きな人がいる?」
 亜里沙さんはまっすぐな目で俺を見つめている。

「いや、あの……」突然のことで俺の頭は混乱していた。
「ごめんね、こんな年上の女から、いきなりそんなこと言われたら驚くよね」
 亜里沙さんは謝ると顔を伏せた。彼女の長く明るい色の髪がさらさらと流れる。
「でも私ね、洋介くんのことずっと気になってたの」彼女はぽつりと話し始めた。
SNSであなたの歌を聴くたびに胸がドキドキして、あなたに会いたいなって思うようになって……だから、思い切ってあのメッセージを送ったの」

 俺は黙って彼女の話を聞いていた。とても信じられない。だが、彼女が初対面の俺を呼び出して、こんな嘘をつくメリットがあるとも思えない。それどころかデメリットすらあるだろう。亜里沙さんにはカラオケSNSで多くのフレンドがいる。もちろん俺もその一人だ。それはトラブルが起きた場合の、リスクの大きさもまた意味している。
 そこまで考えて、俺は彼女の身体が緊張で震えていることに気づいた。

「あの……俺でいいんですか?」
 彼女は弾かれたように顔を上げる。そして最高の笑顔でにっこりと微笑んだ。
「洋介くんがいいの。こうして実際に会って話すまでは、もし会えたらそれだけで満足だと思ってたけど、ぜんぜん無理。私やっぱり洋介くんが好き、あなたが欲しい」と彼女は言った。

 俺は彼女の告白にどう答えればいいかわからなかった。でも、この機会を逃したら後悔すると思った。だから、俺は勇気を出して答えた。
「俺も亜里沙さんのことが好きです」と。
「嬉しい」うっとりとした表情でそう言って亜里沙さんは俺の手を握った。
 その手は先程までの緊張のせいか、少し冷えてしっとりとしていた。俺は彼女の手を温めるように両手でそっと握り返す。

「ねえ、洋介くん、キスしよう。私たちが恋人同士になった記念のキス」
 彼女はそう言うと、そっと瞳を閉じた。俺は彼女のなめらかな頬に手をあてると、ゆっくりと顔を近づけた。
「んっ……」唇が触れ合った瞬間、亜里沙さんは小さく声を漏らす。その吐息が唇を通して伝わってくる。俺はそのまま唇を強く押しつける。
「んっ……ふっ」亜里沙さんは俺の背中に腕を回すと、より深く口づけをしてきた。俺もまた彼女に応えるように、より強く唇を押し当てた。
「ちゅっ……んんっ……はぁ……」俺たちは何度も角度を変えてキスを繰り返す。亜里沙さんの唇は柔らかく、温かかった。

「んっ、ちゅっ……洋介くん……」亜里沙さんはキスの合間に切なそうな声を上げると、俺の身体を強く抱きしめた。
俺はそのまま彼女の腰に手を回すと、ゆっくりと撫で始める。すると彼女はぴくっと小さく身体を震わせた。
「あっ……だめ」亜里沙さんは慌てて唇を離すと俺を見つめる。その瞳にはすっかり潤んでいる。
「ごめん、嫌だった?」俺は不安になって尋ねる。
 彼女は「違うの」と首を横に振った。
「私の方が先に洋介くんに色々してあげたかったのに……」
 彼女はそう言うと俺の首元に顔を埋めると、ちゅっちゅっと音を立ててキスを繰り返した。その感触はくすぐったかったが、俺は彼女に身を任せることにした。亜里沙さんは首筋を舐めると、そのまま舌を這わせていく。

「んっ……あっ……はぁ……」彼女の熱い吐息が耳にかかるたびに、俺の興奮も高まっていく。そして亜里沙さんの手が俺の胸元をまさぐると、シャツの中に手を入れ、俺の胸板を撫で始める。
「洋介くん……好きよ」そう言って彼女は俺の乳首を指先で弾いた。その瞬間、背筋に電流が走ったような快感が走る。
「んっ……あっ……」俺は思わず声を漏らす。亜里沙さんはそんな俺を見て微笑むと、さらに激しく責め立ててくる。

「どう? 気持ちいい?」彼女は耳元で囁くと今度は耳たぶを甘噛みしてくる。その刺激にまたも俺は身体を跳ねさせてしまう。彼女の舌は耳から首筋、そして鎖骨へと降りていく。そして胸元まで辿り着くとシャツを捲り上げ、俺の上半身をほとんど裸にしてしまう。俺は恥ずかしさで顔を背けるが、亜里沙さんは構わずに俺の乳首を口に含むと、長い舌で転がし始めた。
「んっ……ちゅっ……はぁ……」亜里沙さんは夢中になって俺の胸にしゃぶりつく。その姿はとても淫靡で美しかった。

「ねえ、洋介くん……お願い」彼女は乳首への愛撫を止めると俺を見つめた。唇の端に唾液の滴が光る。亜里沙さんの瞳は切なそうに潤み、頰は上気していた。
「私のおっぱいも触って?」
 俺は言われるままに彼女の胸に触れた。柔らかな膨らみが俺の手の中で形を変える。亜里沙さんは嬉しそうに喘ぎながら、俺の股間に細い指を伸ばした。そしてズボンの上から形を確かめるように動いていたかと思うと、ズボンのベルトをカチャカチャと外し始めた。
「ふふ、洋介くんのココはどうなってるかな? あはっ……すごい大きい」
 亜里沙さんは俺のパンツを脱がせると、大きくなったソレを見て興奮したように熱い吐息を漏らした。

「洋介くんのこと、いっぱい気持ちよくしてあげるね、私と付き合ったこと絶対に後悔させないから」そう彼女は言うと、俺の股間に顔を沈めた。
「ちょっ、待って、亜里沙さん、カラオケの室内でそれは、まずいって!」
 俺は慌てて彼女の頭を押さえる。しかし彼女は俺の制止など気にもとめず、そのままイヤらしく舌を這わせ始めた。
「んっ……ちゅっ……はぁ……」最初は先端だけだったが、亀頭を柔らかい唇で優しく包んだり、カリをぐるりと舐め回して刺激しながら、彼女の唇は次第にペニスの根元まで降りていく。やがて怒張をすっぽりと口の中に含むと、ゆっくりと頭を上下させ始めた。その動きに合わせて彼女の長い髪が揺れる。

「んぐっ……ふっ……じゅぽっ……」耳の奥で淫猥な音が鳴り響いてやまない。彼女の口淫により快楽が増し急激に射精感が高まっていく。
「あっ……だめっ……」俺は限界に達しそうになり亜里沙さんの頭を離そうとするが、彼女はそれを許さず更に強く吸い付いた。
「んっ……んんっ……!!」その瞬間、俺のモノは彼女の口の中で弾けた。
 ドクッドクッと脈打ちながら大量の精液が発射されるのを感じる。
「んぐっ!? んっ、んっ、んっ」
 彼女はそれを予期していたのか、ペニスを奥まで咥えたまま、俺の精液をすべて受け止める。そして射精が完全に終わるのを待ってからゆっくりと唇を離した。

 唇の端から垂れた精液を指で掬い、口を開けて舌を伸ばしぺろりと舐め取る。見せつけるようなその仕草は、とても妖艶で俺は思わず見惚れてしまった。
「ふふ、洋介くん気持ちよかった?」彼女は満足したように笑みを浮かべると、俺の頰に優しく触れた。俺は黙って頷くことしかできなかったが、亜里沙さんはますます嬉しそうに微笑んだ。そして俺の耳元で囁く。
「こういうことしたくなったら、これからは私がいくらでもしてあげるからね」そう言うと彼女は俺の頬に軽くキスをした。
 どこまでも淫らに美しく微笑む、できたばかりの年上の恋人を見つめながら俺は自分が世界で一番幸せだと思った。


(続く)