平日のショッピングモールで出会った欲求不満な熟女(1)

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 目的もなく平日のショッピングモールを歩いていたら、俯いてベンチに座っている女性に視線を惹き寄せられた。
 年齢はおそらく40代といったところだろう。ファッションに気を遣っているのか華やかな印象で、おばさんっぽさは微塵もない。見るからに高そうな服を着ており、20代後半でフリーターの自分とは住む世界が違う。おそらく旦那も金持ちなのだろう。
 そんな卑屈な感想を抱きながら彼女の前を通り過ぎようとすると、じっと見られているような視線を感じる。そして気のせいでなければ、その視線の主は物憂げに座るセレブな美熟女だ。今もまさに目が合っている気がするが注視される道理もないし、いやもしかすると俺の存在そのものが高貴なマダムには不快なのかもしれないと慄いていると、
「あの……申し訳ありません。すこしお伺いしたいことがあるのですが」と声をかけられたので、それはもう驚いた。

「なんでしょうか?」
「実はこういった機械に疎くて、先程購入したのですが使い方が判らないのです」
 彼女から手渡されたスマホを見ると、最新型の高性能機種だ。俺も同じメーカーの廉価版を使っているので、設定と操作方法を教えるくらいはできる。
「わかりました。少し見せていただけますか?」
 彼女は頷き、両手で丁寧に真新しいスマホを差し出してきた。滑らかな生地に包まれたお尻を浮かせて少し横にずれるので、おそらくここに座れということだろう。俺は美熟女の隣に腰を下ろした。

 電源を入れたところで、ふわりと心地よい香りが漂ってくる。高級感のある甘さが混じった独特な香りだ。
「素敵な香りですね」
「ありがとうございます。これ、私のお気に入りなんですよ」
 電源が入り、ホーム画面が表示されるまでの手持無沙汰な時間を、俺は当たり障りのない会話で埋める。
「そうなんですか。香水には疎いんですが良い香りだと思いました。もし良かったら名前を教えていただけませんか?」
「私は桜庭真央と申します。あなたは?」
 香水の名前を聞いたつもりだったが、彼女自身の名前をフルネームで名乗られてしまい狼狽える。とはいえここで名乗らないのも変なので、「真壁静雄です」ともごもごと答えた。

「真壁さんですね、よろしくお願いします」
 そう言って彼女はにこりと微笑む。
 それから数十分ほど、真央さんにスマホの使い方をレクチャーした。一通り操作を確認した後、簡単な初期設定を済ませる。これで大体の基本的な機能は使えるはずだ。
「ありがとうございました。助かりました」
「いえいえ、お役に立てて幸いです」
 礼儀正しく頭を下げる彼女に、つい緊張してしまう。

「あの……もしご迷惑でなければ教えていただいたお礼にお茶でもご馳走させてください」
「え? いやそんな悪いですよ」
「遠慮しないでください。それに私、あまりお友達がいないので……少し付き合っていただけると嬉しいです」
 そう言ってはにかむ真央さんは、どこか寂しげだ。旦那さんがいてお金に不自由はしていなさそうなのに、なぜこんな場所に一人でいるのだろうかと不思議だったが、寂しさを埋めるために出掛けているのかもしれない。
「それじゃあ……お言葉に甘えてもいいですか?」
 そう答えると彼女は嬉しそうに微笑み、立ち上がった。俺もその後に続く。
「近くにおすすめのカフェがあるんです」
「どんな店なんですか?」
「チョコレート専門のカフェなんですが、とても美味しいんですよ」
 そう言って嬉しそうに笑う姿が少女のようで、俺は不覚にもドキリとしてしまった。

◆◆◆

 案内されてショッピングモールを出て路地を進むと、真央さんが指さした先には小さなビルがあり、その1階で営業している店がそれだった。
「いらっしゃいませ」
 店内に入ると、若い女性店員が出迎えてくれた。
「お好きな席へどうぞお座りください」
 案内されて窓際の席に着くと、メニュー表を渡された。チョコレート専門店というだけあってメニューには様々な種類のチョコレートドリンクやスイーツが並んでいる。俺は無難にブレンドコーヒーとチョコレートケーキを注文し、真央さんは紅茶とガトーショコラを頼んだ。

「美味しい」
 一口食べて、思わず声を上げる。濃厚なチョコレートの味が口いっぱいに広がり、その甘みと苦味が絶妙に混ざり合う。こんなに美味しいケーキがこの世に存在したのかという感動すら覚えた。
「気に入ってもらえてよかったです」と真央さんは嬉しそうに笑う。
 それからしばらく他愛のない会話が続いたが、やがて話題はお互いのプライベートな部分に踏み込んでいく。

 真央さんは現在45歳で、旦那さんとはお見合いで知り合ったそうだ。彼女自身もブティックを経営しており、なるほどお洒落で華やかな印象なわけだ、と納得する。経済的にも余裕があり、誰もが羨む理想の夫婦だ。しかし最近になって、そんな旦那が浮気している気配があるらしい。
「私にはもう飽きたんでしょうか……」と寂しそうに呟く真央さんの表情はとても悲しげだった。
「そんなことはないと思いますけど」と俺は答えることしかできなかった。

 気づけば2時間以上経ち、窓の外は夕日に染まっていた。そろそろ帰ろうかと時計を見たところで、真央さんが思い切ったように口を開いた。
「今日は本当にありがとうございました。スマホのこともそうですけど、こうしてご一緒していただいて」
「いえ、大したことじゃないですよ。それに俺もとても楽しかったです」
「お優しいですね。私、感激しちゃって……」
 そう言うと、真央さんは少し頬を赤らめて続けた。

「家族に相談できればいいんですけど、子供は大きくなって一人暮らしをしてるし、夫にも相談できなくて……」
 真央さんは複雑な表情を浮かべる。
「でも、静雄さんは違いました。親切に助けてくださって本当に嬉しかったです。それに優しい眼差しで私の話を聞いてくれて……」
 どうにも話の着地点が見えないので、黙って彼女の話を聴く。
「最近夫との関係が上手くいってなくて……。会話もほとんどないし、寝室もずっと別々なんです」

「私の勘違いかもしれませんが、妙によそよそしくて私と目を合わせようとしないんです。スマホを見る回数も増えて……。それに女物の香水の残り香がすることもあるんです……」
 真央さんは目を伏せるようにして、消え入りそうな声で告白する。
「私自身も夫を男性として見たり意識したりすることが減ってしまって……、それが夫の浮気に拍車をかけてるのかもしれません」
 そこまで話してから、彼女は俺の方を向いた。その瞳には不安と期待が入り混じっているように見える。

「私、この年になってこんな悩みを持つなんて思いませんでした。若い頃は恋愛三昧だったのに、今じゃ全然違う。自分でも情けなくて……」
 真央さんは遠い目をして言った。
「時々、このままずっと一人なのかなって不安になることもあるんです。誰も私のことを見てくれない気がして……」
「真央さんが一人なんて、俺には考えられません。素敵な女性だし、とても魅力的です。きっと旦那さんもそう思ってるはずですよ」
 真央さんは俯いてしまった。彼女の表情からは寂しさや切なさが伝わってくる。その一方で俺は彼女の真意もまたはかりかねていた。言葉の意味だけを捉えると、なんだかまるで『欲求不満な私を誘ってください』と言っているかのようだ。いや、もちろん目の前の寂しそうな女性がそんなことを考えているはずはない。

 しかし……。
「ごめんなさい。私、何を言ってるんでしょう。ご迷惑でしたよね?」
 真央さんは慌てたように頭を下げて謝罪する。
「いえ! そんなことはありません」と俺は慌てて否定したが、内心は穏やかではなかった。
「でも……もし静雄さんがよろしければ……」
 彼女は少し言い淀んでから続ける。
「またお会いしてくれませんか?」
 その一言で俺の心臓は大きく跳ね上がった。まさかこんな展開になるとは思ってもいなかったからだ。

 彼女は意を決したように続ける。
「私、静雄さんのことが気になってます」
 突然の言葉に俺は言葉を失った。確かに容姿端麗な美熟女ではあるものの、今日出会ったばかりの女性にこんなことを言われても戸惑うだけだ。
「あの、それは……」
「今日だけで終わらせたくないんです」
 潤んだ瞳で見つめられ、思わずドキリとする。心臓が早鐘を打ち始めたのを感じたが、平静を装って答えた。

「俺でよければ……喜んで」
 それを聞いた彼女は嬉しそうな笑顔を見せた。その笑顔を見た瞬間、俺は完全に心を奪われていた。
「……嬉しいです」
 幸いなことに店内は閑散としており、俺たちの会話に注意を向ける客はいない。彼女は俺の手をとり指を絡めて小声で囁く。
「静雄さんさえよければ、この後どこか静かな場所で、もっとお互いのことを知りませんか?」
 瞳を潤ませ期待するような眼差しで見つめる彼女の手に力がこもる。それは俺に獲物を捕らえた食虫植物を連想させた。
「いいんですか? 本当に俺なんかで」
 真央さんが上気した表情で無言で頷く。彼女の白くて細い喉が唾を飲み込み動いたのを見て、俺は彼女の手を握り返した。

◆◆◆

 カフェを出て、そのままラブホテルへと向かうことになった。道中はお互いに言葉少なだったが、不思議と気まずさはない。むしろこれから起こることを想像すると妙に落ち着かない気分になってくる。
 建物に入りエレベーターに乗り込む間も手を繋いだままだったが、俺は緊張を抑えることに必死だった。正直言って女性経験はかなり少ない方だと思うし、ましてや人妻と出会ったその日にホテルへ足を踏み入れることになるとは想像すらしていなかったからだ。

 部屋に入るなり、真央さんは俺を抱きしめた。香水の香りが強く感じられて勃起を掻き立てるようだった。
「あ、真央さん……シャワーを……」と言いかけたところで、彼女は俺の口を唇で塞いだ。舌を差し込み口内に侵入する。最初は探り探りの様子だったが徐々に遠慮がなくなり、俺も興奮してそれを受け入れた。
「ん……はぁ……んん……」しばらく舌を絡め合ったところで、彼女は唇を離すと耳元で囁いた。
「シャワーなんか必要ないですよ」

 俺は小さく首肯しそのまま二人でベッドへと向かった。お互いに着衣を脱ぎ捨てながら、もつれるように彼女を押し倒す。彼女の白く透き通るような肌が現れその美しさに息を呑んだ。首筋に舌を這わせると真央さんが甘い吐息を漏らし始めるのがわかった。
「あぁん……はぁ……」
 香水とは違う、雄を誘う甘い雌の匂いを放つ、真央さんの肉体を貪るように求める。
「ああっ! ……んっ!」
 真央さんが身体をくねらせ悶える。その姿はとても淫靡で、俺はますます興奮してしまう。

「綺麗だ」俺は無意識に呟いていた。その言葉に真央さんは恥ずかしそうに顔を背けるが、その表情は明らかに喜んでいるように見えた。そんな彼女の姿に俺の理性は完全に飛んでしまった。激しく胸を揉みしだきながら首筋や鎖骨を舐め回すと、真央さんが悲鳴のような声を上げた。
「ああっ! だめっ……そんなにしたら……ああぁぁん!」
 そのまま乳首にしゃぶりつくと彼女は身体を仰け反らせた。舌先で転がすようにして刺激を与えるとビクビクッと痙攣するように反応する。その姿が可愛らしくて執拗に攻め立てると次第に息遣いが激しくなり嬌声が大きくなってきた。
「ふぁっ……! あああぁんっ……! はぁっ……」
 真央さんが腰を動かす度にベッドのスプリングがギシギシと音を立てて軋む。俺は彼女の両脚を広げさせ、その間に顔を埋めた。そこはすでに洪水のように濡れており、ヒクついているのが見えるほどだった。

「真央さん、すごいことになってますよ……」
 俺が言うと彼女は恥ずかしそうに顔を背けるが、その仕草すら扇情的だった。割れ目に沿って舌を這わせると真央さんは一際大きな声で鳴いた。
「ああぁっ! ああんっ……はぁんっ……!」
 舌先を尖らせてクリトリスを刺激してやると、彼女は身体を弓なりにしならせる。
「ひゃあんっ! ああんっ……はぁんっ……!」
 しばらくそうやって責め続けていると、やがて真央さんは絶頂を迎えようとしていた。
「ああっ! もうダメぇっ……! イクッ……イッちゃうぅっ!!」
ビクビクッと身体を痙攣させ、彼女はぐったりと脱力する。肩で息をしながら俺を見つめる表情はとても艶めかしかった。その淫靡な姿に俺の男根は痛いほど勃起している。早く挿入したくて堪らなかった。

「私の中に入りたいですか?」
 真央さんの言葉に俺はごくりと唾を飲み込んだ。
「はい……真央さんの中に挿れたいです」
 素直にそう答えると、真央さんは嬉しそうに微笑んでから俺の男根を握り上下に擦り始める。その刺激だけで果ててしまいそうになるほど気持ちが良かった。
「ふふ……こんなに硬くして……」そう言いながら彼女は亀頭に軽く口づけをした。そしてそのままゆっくりと口に含んでいき、舌を使って丁寧に舐め回すように奉仕してくれる。その快感に腰が砕けそうになるほどだった。やがて完全に勃起したのを確認すると、真央さんは起き上がって騎乗位の体勢になった。

「約束ですよ。これからも会ってくださいね」
 妖艶な笑みでそう言って腰を落とすと、ズブズブッという音と共に根元まで一気に呑み込んでしまう。膣内はとても熱くて狭く、それでいて柔らかく包み込まれるような感覚に思わず声が出た。
 真央さんの方も感じているようで、腰を上下させる度に甘い吐息を漏らしている。その表情は快楽に溺れきっているように見えた。その淫らな姿を見ているとますます興奮してしまい、俺は無意識のうちに下から突き上げていた。


(続く)