路面電車で出会った女性との、白昼夢のような日々に迷い込んでいる(2)

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 駅前のカフェは休日の午後だというのに、それほど混雑していなかった。  僕と彼女は窓際のテーブルに向かい合い座り、コーヒーとケーキを注文する。彼女はホット、僕はアイスだった。 「あの……」  僕は彼女に話しかけようとして言葉に詰まった。何を話していいのかわからないのだ。  話題に窮した僕に、彼女は小首を傾げる。その仕草がとても可愛らしかったので、思わず見惚れてしまい言葉を忘れた。そしてそんな自分がい...

路面電車で出会った女性との、白昼夢のような日々に迷い込んでいる(1)

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 息をのむような、という表現がある。英語でも”breathtaking”という単語が似たような意味らしい。ということは思いもよらぬ事態に直面したとき、ふいに呼吸を忘れてしまうのは、広く普遍的な反応であるようだ。  大学を卒業してすぐの頃、僕は路面電車の車内で、息をのむような美しい女性に出会った。  午後の光が彼女のきめ細かな白い肌を照らしていた。年齢はおそらく20代から30代だろう。生活感が希薄でどんな人物なのか想...

音楽教師との学生時代の思い出(3)

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 彼女との付き合いが始まりから別れまで順風満帆であったとはいえない。秋が過ぎ冬が訪れ俺の卒業が近づくにつれて、彼女の情緒は少しずつ不安定になっていった。しまいには体調不良といい一カ月以上も学校を休む始末だ。俺は毎週のように休日は彼女の家を訪れ、彼女の心と体を慰めた。 「ねえ、卒業しても会ってくれる?」彼女は泣きながら俺に縋りついてきた。 「もちろんですよ、むしろ卒業してから方が会いやすくなるじゃな...

音楽教師との学生時代の思い出(2)

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「先生、好きです」俺は彼女の耳元で囁いた。 「私も好きよ」彼女はそう言うと俺の首に手を回して抱き着くようにキスをしてくる。そしてそのまま舌を入れてきたので、俺はそれを受け入れながら彼女の胸に手を伸ばす。ブラウスの上からでもわかる大きな胸を優しく揉むと彼女は小さく吐息を漏らす。そして俺がキスをしながらブラウスのボタンを外していくと彼女も俺の服を脱がせ始めたので、俺たちは裸になるとベッドの上でお互いの...

音楽教師との学生時代の思い出(1)

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 短文投稿型のSNSで「音楽教師の地雷率が高い」との投稿が盛り上がっていたので学生時代を懐かしく思い出した。今にして思えば、確かに俺の通う学校の音楽教師も地雷だった。音楽の授業で先週までの流れを完全に無視して時間中ずっと勝手にピアノを弾いていたこともあるし、部活の指導をしたくないという理由から吹奏楽部はなくなった。三年生のときはクラス担任であるにも関わらず、受験もそろそろという時期に機嫌を損ねて一カ...