テレビのお天気お姉さんが元カノだった件
学生時代の元カノがテレビに出ていた。いわゆるお天気キャスターというやつだ。びっくりしたが、生きていればそういうこともあるだろうと気を取り直した。よくわからないけど、自分には縁のない華やかな世界で生きているのだろう。そう考えると学生の頃に一時的とはいえ親しかった女性が、有名人になっているのは少し誇らしくもあった。
ただ有名人はやっぱり同窓会の集まりなんかには出席しないんだろうなあ、と思っていたので、数日後、同窓会に参加している彼女を見たときはびっくりした。それでも流石に色々やんちゃした元カレの存在は無かったことにしたいだろう、と関わらないようにしていたら「直樹くん何で無視するの?」と話しかけられたのでさらにびっくりした。
「いや、明子さん有名人になったしさ。美しい思い出のままにしといた方がいいのかなって」
「テレビに出たの見てくれたんだ、どうだった?」
「横を向いた時のおっぱいの膨らみがエロかった」
「あー、直樹くんがエロいのも相変わらずだねえ」
「ネットでも結構話題になってたじゃん」
彼女はそれについてはあまり興味がないのか、そうなんだ、と言うと僕にこっそり耳打ちする。
「ねえ、それよりこの後、二人で会えない?」
「心配しなくても、付き合ってた頃の写真や動画を週刊誌に売ったりなんかしないよ」
仮に持ち込んだところでこんなに垢抜けて綺麗になっていると、そもそも同一人物だと信じて貰えるかどうかも微妙だろう。彼女がヌード写真集でも出せば乳輪のサイズから本物だと一目瞭然だろうが、余計なことは言わないでおく。
「えっ、まだそんなの残してるの? 私に未練たらたらじゃーん」彼女は優位に立ったと勘違いしているのか嬉しそうだ。微妙に偉そうに絶妙にイラつく表情でそう言った。
でもまあ、彼女が頑張ったのは間違いなく事実だと思ったので僕は特に反論しなかった。それにどうせ反論しても彼女を調子に乗せるだけだ。
「まあいいの、それはそれとして。久しぶりに会えたんだし、せっかくだから二人きりで話そうよ」と上目遣いで言う。
このあざとい上目遣い懐かしいわー、と思いながら「連絡先は変えてないから後で連絡してよ。変な噂が立っても困るだろうし」と言ってその場を立ち去った。
◆◆◆
同窓会はそれなりに盛り上がり終わった。僕も久しぶりに会いたいと思っていた友人と話せてとても楽しい時間を過ごせた。二次会に参加するグループ、帰宅する人たちでワイワイと盛り上がっている中、元カノである明子から『終わったら二人で会おうね』とスマホに連絡が来ていたので『了解』と返事を送り、帰宅する人たちの輪に加わる。二次会グループの友人から「せっかくだからこのまま飲みに行こうぜ」と誘われたが「ごめん、また今度誘ってよ」とお断りする。
帰り道をぶらぶらと一人で自宅に向かい歩いていると、「おーい」と後ろから声をかけられる。明子さんだ。
なんで? と思ったが「もしかして僕のこと尾行してたの?」と訊くと、彼女はちょっと迷った後で「まあね」と言って頷く。面白い冗談だ。
「それで本当は何で、ここで明子さんと偶然出会ったわけ?」てっきり彼女からはメッセージアプリで連絡が来ると思っていたのだが。
「立ち話も何だしどっか行こうか」と言いながら僕は歩き出すが、彼女は少し遅れてから着いてくる。どうやら一緒に行きたいところがあるらしい。そういえば同窓会でも話したいことがありそうな言いぶりだったなと思い出し、彼女の希望を尋ねることにした。
「どこか行きたいところがあるの?」と訊ねると彼女からは意外な言葉が返って来た。
「ラブホテル」「はぁ?」思わず彼女を二度見してしまう。せめて僕の家とかじゃないの?
「えっ、なんで?」と聞き返すが、彼女はピンときてないらしく怪訝そうな表情で首を傾げている。僕が誘いに乗らない可能性を微塵も考慮してなさそうなところがすごいと思った。
「いや、だからその、アレだよ……」と僕が言い淀んでいると「ああ、もしかして」と言って彼女は自分の鞄をゴソゴソと漁り始める。「はいこれ」と言って彼女は僕にコンドームを渡してきた。「ちゃんとポリウレタン製の0.01mm用意しといたから」思わず受け取ってしまったが、意味が分からずに困惑するばかりだ。
「一応渡しておくけど、私ね、今日危険日なの。だから中出ししてもいいよ」
「おかしいなあ、前提と結論がずれてる気がする……。飲みすぎたかな」
「直樹くんが飲みすぎたとしても私は素面よ」そう言いながら彼女は僕の腕に自分の腕を絡ませてきた。そして相変わらずボディタッチが大胆だなと思いつつ、振りほどくのも大人げないのでそのままにする。
「いや、明子さんと僕はもう別れてるんだし、ラブホテルとか言われてもちょっと……」とやんわり断るが、彼女は聞く耳を持たないらしい。
「なんで? せっかく久しぶりに会えたんだからしようよ! ……それとも他に付き合ってる人がいたりするの?」と言うと、彼女は僕の顔を下から見ながら「ねえ、どうなの? 教えてよ」と上目遣いで訊いてくる。だから、このあざとい仕草に僕は弱いのだ。
「いや、いないけど……」と答えると彼女は嬉しそうに笑った。「じゃあ決まり」と言って僕をぐいぐいとホテル街の方へと引っ張って行く。彼女の押しの強さに負けてラブホテルまで来てしまった。
◆◆◆
部屋に入ると彼女はさっそく服を脱ぎ始める。「直樹くんも早く脱いで」と言われたが、どうしたものかなあ。彼女はさっさと服を脱いだかと思うと、今度は僕の服を脱がせにかかる。そのまま流れに身を任せて彼女にベッドに押し倒された。
「昔みたいにイチャイチャしようよ」と言って彼女は僕に抱きついてきた。柔らかい胸が押し付けられて気持ちいい。そのまましばらく抱き合った後、彼女は僕の上に跨って騎乗位の体勢になろうとしたので、僕は慌てて彼女を止めた。
「ちょっと待った! まだ心の準備ができてないから一旦降りて」そうお願いすると、彼女は渋々といった表情で僕から離れる。そして「じゃあ心の準備ができるまで待ってるから、それまで勝手にイチャイチャしてもいい?」と言って、再び僕に抱きついてきた。彼女は僕の首筋に顔を近づけるとクンクンと匂いを嗅ぎ始める。なんだか大型犬みたいだなあと思っていたら突然ぺろぺろと舐め始めた。付き合ってた頃とは違う愛し方に少し複雑な気持ちになるが、舐められるのは気持ちよかったのでそのまま受け入れることにした。
しばらくすると満足したのか、今度は僕の股間を弄り始める。「心の準備はまだみたいですけど、こちらの準備はどうでしょうか?」などど実況を始めるので、僕は知らない男への嫉妬や苛立ちもあり「ちょっと……」と不機嫌に制止すると彼女は手を止めた。
「直樹くんは私としたくないの?」と彼女は居住まいを正して正面から真剣に訊ねる。そういうわけじゃないけど……と言い淀んでいると彼女は僕のズボンを脱がせて直接ペニスを触ってきた。僕は観念して彼女の好きにさせることにした。
「本当に綺麗な形してるよね。大きさもちょうど良いし、この反り返った感じとか、カリ首のところがすごくえっちだし……。それに先端も亀頭がぷっくりしてて可愛いんだよね」と彼女は僕のペニスを褒めてくれるが、可愛いという感想は初めて言われたので少し微妙な気持ちになった。彼女の手つきは慣れたもので、緩急をつけながら絶妙な力加減で刺激を与えてくるので思わず腰が動いてしまう。
「触るのはいいんだけどさ、他の男のモノと比べられてるみたいで萎える」
「うん、ごめんね。もうしない」そう言って彼女が手を放したので、僕は少し残念に感じつつもほっとする。やっぱりこんな成り行きでセックスするのは止めよう。
しかし次の瞬間には彼女は僕のペニスをぱっくりと咥え込んでいた。暖かい口腔内の感触に思わず声が出そうになるが我慢する。そのまま舌で裏筋を舐め上げられたり、カリ首を唇で締め付けられたりと絶妙な力加減で責められると一気に射精感が高まってきた。このままだと彼女の口に出してしまうと思い慌てて引き剥がそうとするが彼女は離れない。それどころかより深く飲み込み、喉奥でぎゅっと締め付けてくる。結局そのまま口内に出してしまい、彼女はゆっくりと口を離すと僕の精液を手のひらの上に吐き出した。
「久しぶりに会ったのにいきなり口で出してくれるなんて直樹くんもやるね」そう言って彼女は嬉しそうに笑うと手のひらの上に乗せた僕の精液をわざとらしく見せびらかしてきた。僕は恥ずかしくなって彼女から目を逸らしてしまう。すると今度は彼女がコンドームを取り出して、僕のものに装着し始めたので慌てて止めた。
「いやいやいやいや、なんでゴムつけようとしてんの? もう終わりにしよう」と慌てて言うが彼女はきょとんとした表情で「なんで?」と逆に訊き返してきた。
「いや、だって……、その……」と僕が口ごもってると、彼女は僕の耳元に口を近づけて囁いた。
「私ね……直樹くんが欲しい」そう言って再び僕に抱きついてくる。そして僕の胸に顔を埋めながら上目遣いでこちらを見上げてきた。彼女の目は潤んでおり頬も赤く染まっている。僕は思わず生唾を飲み込んだ。
「でもなあ……仕事に悪影響とかあるんじゃないの?」
「そんなことないよ。直樹くんのこと好きだもん」そう言って彼女は僕の唇に自分の唇を重ねてきた。僕は一瞬躊躇したが、結局彼女を押し退けることはできず、そのまま彼女と舌を絡ませる。お互い唾液を交換しあいながら何度も角度を変えて口づけをするうちに頭がぼーっとしてきたところで彼女が唇を離したので、僕は名残惜しさを感じつつも彼女から目を逸らした。
「じゃあ入れるね」と言って彼女は僕の上に跨り騎乗位の体勢になる。そしてゆっくりと腰を落としていき、僕のペニスを受け入れた。彼女の中は熱く湿っており、僕を包み込んでくるような感覚に襲われる。数年ぶりに味わう彼女の胎内の感触に僕は感動を覚えた。
「全部入ったよ」と彼女は嬉しそうに報告する。僕はといえば、それどころでhないので黙っていた。しばらく繋がったまま抱き合っていると彼女の膣内が絡みつくようにうねり始め、同時に僕のものを搾り取ろうとしてくる。
「気持ちよすぎるから手加減してよ」僕が咎めるように言うと彼女は悪戯っぽく笑う。そして徐々に腰を動かし始めた。最初は緩慢だった動きは次第にリズミカルになり、結合部からはじゅぷじゅぷという水音が聞こえ始めた。彼女の中はまるで別の生き物のように蠢き僕を離さないと言わんばかりに締め付けてくるのですぐに果ててしまいそうになる。
「気持ちいい?」そう言って彼女は妖艶な笑みを浮かべたまま僕の顔を見つめてきた。正直めちゃくちゃ気持ちよかったので素直に認めるしかなかった。
「やばい、イキそう……」
「まだダメだよ」と言って彼女は動きを止めてしまった。中途半端に焦らされた僕はつい恨めしそうな目で彼女を見つめてしまうが、彼女は素知らぬ顔で再び動き始める。今度は彼女自身が気持ちよくなるための激しいグラインドだ。膣内の襞ひとつひとつが絡みつくような感覚に加えて、亀頭や裏筋など敏感な部分を的確に責め立てられてすぐに限界を迎えそうになった。しかしまたも彼女は動きを止めてしまう。今度は浅いストロークで焦らすように動かしてくるので、僕は堪らず自分から突き上げてしまった。しかしそれでも彼女は腰を浮かし、再び動きを止めてしまう。その後も何度か同じことを繰り返したが結局一度も果てることはできずに終わった。
「ごめん明子さん……そろそろ限界かも」と僕が音を上げると彼女は嬉しそうな表情で僕を見下ろしながら言った。
「じゃあ最後は一緒にイコっか」と言って僕の手を恋人繋ぎのように握ってくるので、僕もそれに応えて強く握り返した。そして二人同時に絶頂を迎えると膣内が痙攣するように震え始め、僕のものを搾り取るかのように締め付けてきた。あまりの快感に僕は思わず声を漏らしてしまいそうになるがなんとか堪えることができた。
「んっ……」という小さな吐息とともに彼女の身体から力が抜け、僕の上に倒れ込んできたので慌てて受け止めた。「気持ちよかったね」彼女は荒い息を吐きながらも笑顔でそう言った。とりあえずゆっくりと引き抜くとゴムの処理をしてから僕らは並んでベッドに横になった。
◆◆◆
その後、二人でシャワーを浴びてから身支度を整えた後、ラブホテルを後にした。
帰り道は手を繋いで歩いたが会話はなかった。しばらくして人通りの少ない裏路地に入ったところで僕らは足を止めた。
「最後にキスさせて」と言って僕は彼女の肩を掴むと強引に唇を重ねた。彼女もそれに応えるように僕の首に腕を回してくるのでしばらくの間お互いの唇を貪り合った後、ゆっくりと顔を離す。彼女は寂しそうに微笑むと僕に向かって手をひらひらと振った。僕も手を振り返すが彼女はそのまま歩き去ってしまった。
それから数日は仕事をしていても先日のことは夢だったんじゃないかと思うくらい普段通りの日常だった。しかしふとした瞬間に彼女のことを思い出してしまい、その度に胸が締め付けられるような思いに駆られた。そんなことを考えているうちにいつの間にか日々は過ぎていった。
ふと思い立って明子さんにメッセージを送ってみたこともあるが返信はなかった。やはりあれは一夜限りの出来事だったのだと思い知らされるようで、少し寂しい気持ちになったが仕方がないだろう。仕事を終えて帰宅して、一人で夕食を食べ終えると特にやることもなく早めに寝る、そんな毎日を繰り返した。
深夜に尿意を感じて目を覚ます。トイレを済ませてから寝室に戻るとスマホのランプが点滅していた。何の気なしに手に取るとメッセージアプリからの通知だった。送り主は明子さんだった。
『久しぶり! 元気ですか?』という文面を見て心臓が大きく跳ねるような感覚に襲われる。まさか彼女から連絡が来るとは思っていなかったので動揺してしまった。とりあえず返信しようと思ったが、何と返せばいいのかわからないし時間も遅いのでそのまま放置しておくことにした。
翌日、コーヒーチェーン店でお昼休憩をとっていると後ろから肩を叩かれた。振り返るとそこには明子さんが立っていた。「こんにちは、久しぶりだね」と彼女は笑顔を浮かべながら挨拶をする。「え、明子さん? なんで? こんにちは」僕も戸惑いつつも挨拶を返すと、そのまま彼女は僕の隣に腰かけた。
「なんで既読スルーしたの?」そう言って彼女は僕の手を握ってきた。やってることは恋人同士のそれに見えなくもないが、何となく捕まえらて逃げ道を塞がれたような気持ちになった。
「午前中はばたばたしてたからさ、ごめんね」
「それは仕方ないね、私もここ数日ばたばたしてたし」
気まずい沈黙がおりる。僕はぼんやりと彼女にフラれた日もこんな感じだったなと思っていた。
「私、今日引っ越すんだ」
「そうなんだ……え?」
「そうなの、地方局に転勤することになって。だから、新居が決まったら連絡するね」と言って彼女は笑った。僕は呆気に取られて何も言えなくなる。
「じゃあ、私もう行くね。あ、午後から雨降るから傘もってないなら買っておいた方がいいよ」そう言って彼女は立ち上がり、手を振りながら店を出ていった。僕は呆然としたまま彼女の後ろ姿を見送っていた。
それからしばらくして彼女から連絡があった。『新居が決まったよ。広島いいとこだよ。旅行においでよ』という鉄道会社の広告みたいなメッセージだった。僕は短く了解の返事をするとアプリを閉じた。結局、僕の生活は何も変わっていなかったし、これからも変わらないだろうと思う。
「先輩って結婚しないんですか?」と後輩の女性社員に訊かれたので「今のところ予定はないよ」と答える。彼女は意外そうな表情で僕の顔を見つめてきたので思わず苦笑してしまった。
「じゃあ、私が立候補してもいいですか?」と言って彼女は悪戯っぽく笑うので僕は一瞬ドキッとしたが、すぐに我に返って「そういうのは冗談でも言っちゃいけないよ」と窘めた。
「やっぱり先輩って真面目ですよね」と彼女は感心しているのか呆れているのかよくわからないような口調で言うので、僕は曖昧に笑って誤魔化した。
(終)