好みのAV女優と似てる女性と付き合った
映像系のアダルトコンテンツを楽しむ人なら共感してもらえると思うが、たまに「この女優さん知り合いに似ているなあ」と感じることがある。
もちろん、それは多くの場合「そっくりさん」でしかないわけで、いやむしろ、あれは映像として見るから耐えられるのであって、現実にあんな女性が目の前にいたら異質すぎて引く、という男性もいるだろう。
というか俺がまさにそのタイプだ。たまに夜中のコンビニで過剰な色気を放つ女性を見かけるが、小説で個人探偵事務所に依頼を持ち込む美女くらいトラブルの匂いしかしない。
だからこれはあくまでもそっくりさんの話、俺がお気に入りのセクシー女優と、ほんの少し似ている女性と出会った話だ。
◆◆◆
彼女と出会ったのは郊外の大型書店だった。エスカレーターで二階に上がり、海外翻訳小説コーナーに行くと、平積みされている本をじっと眺めている女性がいた。手にとってぱらぱらとページをめくり、そして元に戻す、その動作を繰り返していた。いつもなら「変わったことをしている女性がいるなあ」くらいの感想だが、俺の目的もその平積みされている本だ。何かを確かめているのだろうか、横から勝手に取ってもいいのだろうか、そんな迷いもあり俺は彼女に声をかけた。
「どうかされたんですか?」
俺が背後から声をかけると、彼女は驚いたような顔で振り向いた。
「あ……ごめんなさい」
慌てて本を閉じると申し訳なさそうにこちらを見上げてくる。背が低いので、必然的に俺を見上げることになるわけだ。……うん? 何だろうこの感じは……? 俺は目の前の女性をどこかで見たことがあるような気がした。そして程なく、彼女が映像系のアダルトコンテンツに出演している女優に似ていることに思い至った。見覚えがあったのは、その女優が出演していた、主観視点で撮影された作品を観たことがあるからだ。
「何かお探しなんですか?」俺はもう一度問いかけた。彼女は困ったように眉をハの字にし、さらに上目遣いに俺を見てくる。そして小さな声で呟いたのだ。
「あ……あの……、実は私、人を探していまして……」彼女が探している人物は、本の隙間に隠れているのだろうか。
「……『ウォーリーを探せ』なら絵本コーナーにあると思いますよ?」
「あ、いえ……そうじゃなくて……」彼女はあたふたとしていたかと思うと、はい、と言って持っていた本を俺に渡した。俺も、はい、と言って受け取る。意味がわからなかったが、俺の目的はこの本だったので取る手間が省けたと言えばそう言えなくもない。
しかしそれにしても「かわいいな」と俺は心の中で呟く。もしかすると小さく声に出していたかもしれない。
「じゃあ、私はこれで……」と言って俺が立ち去ろうとすると、彼女は思わずといったように俺の手首をつかんできた。
「え?」なんだ? この本を持って行ってはいけなかったのだろうか。彼女は自分自身の行動に驚いたような表情で俺を見たまま固まっていた。
「あ……すみません」やがて彼女は手を離したが、また困ったように眉をハの字にして俺を見る。
かなり変な女性だが、まあいいか。なにしろ彼女は俺の好きなセクシー女優にちょっと似ているのだ。
「よくわかりませんけど、ここで立ち話も店に迷惑なので、どこか喫茶店にでも行きませんか?」俺は彼女をナンパした。
◆◆◆
書店を出た俺たちは、近くにあった小さな喫茶店に入った。静かな店内にジャズのBGMがかかっている。俺がアイスコーヒーを頼むと、彼女はホットのカフェオレを注文した。
「それで、誰を探していたんですか?」俺は聞いた。
「あの……実は、その本を買う人を探していたんです……」と彼女は答えた。
「この本をですか?」俺がそう聞き返しながら買ったばかりの本を取り出すと、彼女は本の奥付を開いて「ここ」と言って名前を指さした。「デザイン――菊池博美」と印刷されている。
「私です」と彼女は言った。「は?」俺は思わず聞き返す。
「菊池博美です」と彼女は答え、恥ずかしそうに俯いた。……マジかよ?
「えっと……。あの……」俺は何を言っていいのかわからなくなる。こんなことがあるのだろうか。つまり彼女は自分が装丁デザインをした本を購入する人を探していた、ということなのだろうか。
「信じてもらえないかもしれないので、これ証拠です」そう言って彼女はスマホを見せてくれる。編集者に送ったらしき装丁デザイン案がいくつか保存されていた。
「この本のデザイナーだったんですね」俺は驚いて彼女を改めて見た。「はい……」と彼女は小さく頷く。
なるほど確かに、自分が制作に関わった本をどんな人が購入していくのか、見てみたいという気持ちは解らなくもない。もっとも、会話したり手首を掴んで呼び止める気持ちは全く理解できないが。俺はふと思いついて聞いてみた。
「もしかして、サインをしてもらえたりしますか?」
彼女はぱっと笑顔になると、鞄からサインペンを取り出した。そして『菊池博美』と本にサインをしてくれる。俺はそれを受け取ると「ありがとうございます」と言って鞄にしまった。マジかよ……。こうして世にも珍しい、装丁デザイナーのサイン本がこの世に誕生した。
彼女は緊張もほぐれたのか、ホットカフェオレを飲むと「ほう」と一息ついている。俺も自分でもよくわからない感情を呑み込むべくアイスコーヒーに口をつける。
「あ……そういえば」そして思い出したように彼女は言った。
「メッセージアプリのID交換とかした方がいいでしょうか?」
「……一般的には、そこまでのファンサービスはしなくてもいいと思いますよ」
「え?」と彼女が驚いたように呟く。
「え?」と俺もまた彼女が驚いたことに驚く。
「あの……私、ナンパされたんだと思ってました」
彼女は恥じるように俯き、小さな声でそう言った。
「かわいい、って言ってたので、そういうお誘いなのかな、と」彼女の声はどんどん小さくなっていく。
どうやら非は完全に俺の行動にあったらしい。
だが、その無意識の行動は、結果的にファインプレーだったようだ。
「間違っていません。好みの女性だったのでナンパしました。連絡先を教えてください」
そうして俺たちは付き合うようになった。
◆◆◆
デザイン系の学科を卒業したから、というのは大いなる偏見だと自覚しているが、彼女の趣味はコスプレだった。
最初に聞いたときは、特定の業種や国の制服を着るくらいなのかな、と思っていた。だが彼女の家に行くとアニメやゲームのキャラクターをモチーフにした衣装をがっつり自作していた。
「すごいね」と俺が褒めると、彼女は「でしょう?」と言ってドヤ顔をした。
「……もしかしてこういうの好き?」彼女が聞いたので、俺は正直に答えることにした。「たまにAVで観てる」「え?」彼女は一瞬フリーズしていたが、やがてにっこりと微笑みこう言った。「私のコスプレ、見たい?」
それからも俺たちの交際は順調に進展した。
彼女が俺の家に来た際に、お気に入りのセクシー女優の出演するDVDを見つけられたりもしたが、彼女自身はその女優が自分に似ているとは気付かなかったようだ。
まあ、ジャケット写真は修正されてるしね。
◆◆◆
「ねえ、本当にこんなのが見たいの?」と彼女は不満半分、羞恥半分でそう言った。
「へえ、博美の学校って制服はブレザーだったんだ」
俺がその日リクエストしたのは彼女の学生時代の制服だった。コスプレが趣味の彼女に言わせれば、これはシチュエーションプレイであり、断じてコスチュームプレイではないらしい。俺に言わせれば彼女に着て欲しい衣装をリクエストするだけなのでどちらでもいい。
「というか、本物はやっぱり仕立てがいいな。あと手足の長さは変わってないのに、育つところは育ってぱつぱつになっているのがエロい。卒業して10年以上経つのに彼氏にリクエストされたとはいえ、実際に着てしまうのに至ってはヤバい」
「……なんでそんなに饒舌なの」呆れたように言うが彼女も満更ではないらしく、口では「ヘンタイ」と言いながらもノリノリで制服を着こなしていた。
「あのっ、先輩。俺……先輩のことが好きです」俺はそう言いながら彼女を抱きしめる。
「えっ……何が始まったのかと思った……。つまり、そういうシチュエーションてこと?」彼女は呆れつつも俺の抱擁を嬉しそうに受け入れる。
「先輩のこと考えると勃起が止まらなくて、オナニーがやめられないんです」
「……そんな後輩いやだなあ」
「先輩、俺のこと嫌いですか?」俺は彼女の顔を見つめる。
「あ……えっと……好きです」彼女は照れながらもはっきりと言ってくれた。かわいいなあ、と俺は思う。こんな子が彼女だなんて幸せすぎて怖いくらいだ。
「ありがとうございます」と言って俺は彼女を再び抱きしめる。そして今度は彼女の唇を奪った。最初は驚いていた彼女だったがすぐに俺を受け入れてくれる。俺たちは舌を絡め合い、唾液を交換するような激しいキスを交わした後、ゆっくりと唇を離した。
「……ねえ、私のこと好き?」彼女が甘えたような声で聞いてくる。
「もちろん、大好きです」俺は彼女の目を見て言った。彼女は俺だけのものだ。
「じゃあ、私のどこが好き?」彼女は少し恥ずかしそうにしながら聞いてくる。
俺は少し考えてから答えた。「全部好きだけど……強いて言えば、俺のことを一番に考えてくれるところかな」そう言って再びキスをすると、彼女をベッドに押し倒した。もうシチュエーションプレイとか小芝居はいいや。
「え……そんな、ダメだよ」と彼女は戸惑う演技を続けるが、こういうところが愛おしい。。
俺は彼女の胸に手を伸ばした。彼女は「だめ」と言うが本気の抵抗ではなかった。むしろ彼女も興奮しているようで、すでに乳首は勃起していた。指先でそれをつまむように弄ぶと彼女が小さく声を上げる。かわいいなあと思い、今度はスカートの中に手を入れるとパンツ越しに割れ目をなぞった。すでに湿っているようで指を動かす度にくちゅくちゅという音が聞こえる。
「もう濡れてるね」彼女は顔を赤くしながら「うん……」と頷いた。そして「だって、好きなんだもん……」と消え入りそうな声で言った。
「かわいい」俺は彼女のパンツを脱がすと直接割れ目に触れた。そこは熱く濡れており、少し触れただけでくちゅくちゅという音が大きくなった。
「我慢できない、もう入れる」そう宣言して俺は彼女の脚を開き、その間に体を割り込ませた。そして自分のものを押し当て一気に奥まで突き入れる。
「あんっ……いきなりっ」彼女は少し驚いたようだったが、すぐに俺のものを締め付けてきた。俺は激しく腰を動かす。そのたびに彼女の口からは喘ぎ声が漏れた。
やがて限界を迎えた俺は彼女の中に射精した。同時に彼女も絶頂を迎えたのか体を痙攣させるように震わせる。しばらく余韻に浸った後でゆっくりと引き抜くと、彼女の割れ目からどろりと精液が流れ出した。
「すごい量だね……」彼女は自分の股間を見て言った。
「先輩、もう一回」俺は彼女の上に覆い被さると再び挿入しようとする。彼女は少し驚いたようだったがすぐに受け入れてくれる。そして今度はゆっくりと腰を動かし始めた。
「ねえ……今度は私が攻めていい?」彼女はそう言って俺のものを握ると、自分の割れ目にあてがい擦り始めた。「んっ……」彼女もまた感じているようで小さく声を上げる。そして徐々に手の動きを速めていった。俺も負けじと彼女の胸にしゃぶりつく。
「あ……びくんびくんしてる…」彼女は嬉しそうな声で呟いた。そして俺のものを根元まで飲み込むと、ゆっくりと前後に動き始めた。
「どう? 気持ちいい?」俺は素直に感想を述べることにする。「はい、最高です」と俺が答えると彼女は満足げな笑みを浮かべた。
やがて彼女が激しく動くと、俺もそれに合わせて下から突き上げるように腰を動かした。そして二人で同時に抱き合ったまま果てる。
「もう、私以外じゃ満足できないよね?」博美は満足そうに微笑みながら俺にキスをしてくる。
「うん、俺にはもったいないくらい最高の彼女だよ」
「よかった。じゃあ、あの私に似てる女優が出てるAVはもう必要ないから捨てるよね」
「あ……はい」俺はそう答えるしかなかった。
彼女はくすくすと嬉しそうに、私が全部してあげるからそんな寂しそうにしないで、と笑うのだった。
(終)